フラメンコに新風をもたらすセルヒオ・デ・ロペ
フラメンコにジャズを持ち込み、さらにクラシック、プログレ、エレクトロニカなどのスパイスも効かせた音楽性が魅力的なスペインのバンド、セルヒオ・デ・ロペ(Sergio de Lope)が、6年ぶりの2ndアルバム『Ser de Luz』をリリースした。
「セルヒオ・デ・ロペ」はコルドバ出身のフルート/サックス奏者の名であると同時に、彼をリーダーとする5人組バンドの名称でもある。
フラメンコのバンドに木管楽器が入ること自体が珍しいが、彼のフルート・サックスの演奏はフラメンコのカンテ(歌唱)の代用ではなく、明らかにジャズを経由した音で、フラメンコギターやカホンといったパコ・デ・ルシア以降のモダンなフラメンコにある種の刺激を与えようとしていることは明らかだ。
彼の経歴を調べてみるとフラメンコロジー(Flamencología = フラメンコ学)の学位の取得、さらにバークリー音楽大学等主催のコンクールで「地中海地方出身の新進ミュージシャン(músico emergente del Mediterráneo)」に選出されるなど若手の注目株に相応しい記述が見つかる。
セルヒオ・デ・ロペによるオリジナルの他にいくつかの伝統曲の再解釈も収録された今作では、若くして数々の賞に輝き、2018年にはソロデビュー作『12de4』も出したカンタオール(フラメンコ歌手)のマティアス・ロペス(Matías López)が全面参加している。歌手としての彼のスタイルは王道をいく本格的なフラメンコの歌唱ながら、ライヴ動画を観ると分かるようにルーパーや各種エフェクトも用いるなどエレクトロニックをバンドサウンドに導入するという重要な役割も担う。
他のメンバーも相当な手練れで、テクニカルなソロを聴かせるベースのフアンフェ・ペレス(Juanfe Pérez)、変拍子もタイトなリズムで支えるドラム奏者ハビエル・ラバダン(Javier Rabadán)、フラメンコらしさの重要な肝であるギターのダビド・カロ(David Caro)らバンドの演奏も素晴らしい。
伝統色の強いフラメンコに新たな価値観を持ち込もうとする例は近年後を絶たないが、中でも一歩抜きん出た面白い音楽家・グループだ。
リーダーのセルヒオ・デ・ロペは1985年生まれ。8歳からサックスを習い始め、16歳から独学でフルートを始めた。
2015年にファーストアルバム『A Night In Utrera』をリリース。今作『Ser de Luz』は2作目となる。
Sergio de Lope – flute, saxophone
David Caro – guitar
Matías López “El Mati” – voice, electronics
Juanfe Pérez – bass
Javier Rabadán – drums