圧倒的技巧の嵐。レジェンド、ビセンテ・アミーゴ 7年ぶりの新作『Andenes del Tiempo』

Vicente Amigo - Andenes del Tiempo

フラメンコ・ギターの巨匠ビセンテ・アミーゴ 7年ぶり新譜

ビセンテ・アミーゴ(Vicente Amigo)はずっとフラメンコギターのもっともリスペクトされる第一人者であり続けている。2017年の『Memoria de los Sentidos』以来、実に7年ぶりとなる新譜『Andenes del Tiempo』は巨匠の域に達したビセンテの音楽をたっぷりと堪能できる作品だ。伝統的なフラメンコも、ジャズの影響も、そしてより革新的なハーモニーを探求した楽曲もといったように多様性に富み、彼が第一線であり続ける揺るぎない理由がわかる。

(1)「Turrón y Chocolate」には米国のドラマー、デイヴ・ウェックル(Dave Weckl)とベーシストのトム・ケネディ(Tom Kennedy)が参加。フラメンコ特有のコード感や奏法がジャズ・フュージョンの語法と見事に融合した典型的なフラメンコ・フュージョンだが、それが最高にかっこいい。

(1)「Turrón y Chocolate」

アルバムの9曲はすべてインストゥルメンタル。いずれも主役はほぼビセンテ・アミーゴのギターだ。フラメンコの様々な曲種を軸に圧倒的な技巧でギターを弾き倒すビセンテの貫禄に打ちのめされるのが、今作の正しい楽しみ方なのだろう。

全編ビセンテの独壇場かと思いきや、(7)「Corcovado」にはマーカス・ミラー(Marcus Miller)が対抗馬として名乗りをあげる。ともにせめぎ合い、主張しまくるギターとベース。聴いているこちらは、もう笑うしかない。

マーカス・ミラーと共演した(7)「Corcovado」

現代フラメンコギターのレジェンド、Vicente Amigo

ビセンテ・アミーゴは1967年にスペイン・アンダルシア州セビージャ県の小村グァダルカナルに生まれ、5歳の時に同州コルドバ県都コルドバに移り住む。3歳の時にパコ・デ・ルシア(Paco de Lucía, 1947 – 2014)をテレビで見てフラメンコギターを知り、8歳の頃からギターを弾き始めるようになった。

最初にコルドバで名手”エル・トマテ”(Juan Muñoz “El Tomate”)と”エル・メレンゲ”(Rafael Rodríguez Fernández “Merengue de Córdoba”)に師事。のちに巨匠マノロ・サンルーカル(1943 – 2022)に師事し彼のグループで5年間演奏し腕を磨き、1988年からソロ活動を開始。1991年にアルバム『De Mi Corazón al Aire』でデビューを飾った。

2000年にはプロとしてのキャリアが認められ、アンダルシア政府からアンダルシア勲章を授与される。また同年の作品『Ciudad de las Ideas』はラテングラミー賞の最優秀フラメンコアルバムを受賞した。

フラメンコ楽器として初めてトランペットを取り入れたり、デヴィッド・ボウイのオープニング・アクト、アル・ディメオラやミルトン・ナシメントとの共演など、フラメンコの伝統に捉われない革新的な活動を行うアーティストとして知られている。

Vicente Amigo - Andenes del Tiempo
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