フランスと韓国の若き天才カップルの初デュオアルバム
フランス出身のギタリスト、アントワーヌ・ボワイエ(Antoine Boyer)と韓国出身のハーモニカ奏者キム・ヨレ(Yeore Kim, 김여레)。注目される二人の若きアーティストが初のデュオアルバム『Tangram』を完成させた。
2018年の台湾のジャズ・フェスティヴァルで出会ったというアントワーヌとヨレの二人は同年エグベルト・ジスモンチの難曲「Frevo」など数曲をギターとハーモニカで演奏した動画をYouTubeにアップし一部で話題になっていたが、ついにそのデュオでのアルバムデビューを果たした。
今作では計7名のミュージシャンでバンド(Tangram:7つの図形を用いた有名なパズルの名称)を組み、自作曲やスタンダード曲を演奏。アルバムではジャンゴ・ラインハルトとトゥーツ・シールマンスの系譜を汲む二人のユニークな才能の出会いが生んだ驚くべきパフォーマンスを楽しむことができる。
アントワーヌとヨレの共作曲(2)「The Waltz Only You Can Dance」は11拍子の非常にテクニカルな曲で、ワルツの優雅さを持ちつつもそれに止まらない前衛的な表現がたまらなくかっこいい。
二人のみで演奏されるジョビンの(3)「Imagina」、Radioheadの名曲(8)「Exit Music for a Film」、アントワーヌのアコースティックギターとヨレのハーモニカが美しくも情熱的に絡むポール・マッカートニーの(9)「Blackbird」、エンニオ・モリコーネの(11)「Playing Love」(映画『海の上のピアニスト』より)といった有名曲のカヴァーも絶品だ。
ラストのキム・ヨレ作曲(12)「Mother to the World」のみ随分とノイズの多い録音だが、それが余計に公私を共にする二人の親密ぶりを思わせる。
アントワーヌ・ボワイエとキム・ヨレのプロフィール
ギタリストのアントワーヌ・ボワイエは1994年フランス生まれ。
幼少期からジプシージャズの名ギタリストたちにギターを学び、13歳頃より父親のセバスチャン・ボワイエ(Sébastien Boyer)のバンドで活動を開始。2007年に14歳でデビューアルバム『Leské』をリリースした。
1993年生まれのフラメンコギタリスト、サミュエリート(Samuelito)とのデュオ活動でも広く知られている。
一方のクロマチック・ハーモニカ奏者キム・ヨレも十代の頃から韓国のジャズシーンで活躍している。
マルチ奏者としても知られ、ハーモニカのほかにトランペット、ドラムス、チェロ、ピアノなども演奏する才女だ。
アジア太平洋ハーモニカ・フェスティバル、ソウル・ハーモニカ・フェスティバルなどで優勝するなど、ジャズハーモニカ奏者として注目を浴びている。
二人は2020年8月に結婚した。
これから夫婦でどんな素敵な音楽を届けてくれるのか、楽しみにしていたい。
Antoine Boyer – guitars
Yeore Kim – harmonica, voice
William Brunard – double bass
Jonathan Gomis – drums
Jean-Louis Pommier – trombone
Geoffroy Tamisier – trumpet
Matthieu Donarier – saxophone, clarinet