アフリカ音楽からも強い影響を受けたファビア・マントウィルのデビュー作
ドイツ・ベルリン生まれの作曲家/サックス奏者/シンガーのファビア・マントウィル(Fabia Mantwill)が、自身の管弦楽団を率いて初のアルバム 『Em.Perience』を発表した。ジャズ・オーケストラと西洋のクラシック音楽に根ざしつつ、アフリカの伝統音楽にも強く感化された壮大な作品で、ゲストにギタリストのカート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)やトロンボーン奏者のニルス・ラングレン(Nils Landgren)といった現代を代表するミュージシャンが参加するなど、新たな才能のデビュー作としてはかなりのインパクトのある作品に仕上がっている。
本作のほとんどはファビア・マントウィルの作編曲だが、例外として(1)「Ophelia」は米国の人気SSWベッカ・スティーヴンス(Becca Stevens)との共作、そして(9)「Festival at High Noon」は米国生まれでタンザニアを拠点に活動する作曲家ミーガン・ンダレ(Megan Ndale)が作曲者としてクレジットされている。
(4)「Sasa Ndio Sasa」(スワヒリ語でHere and Nowの意)はアフリカ音楽からの影響が強く反映されたジャズのラージアンサンブルとしてはかなりユニークな作品で、アフリカ的な三連符のリズムとジャズのスウィングのリズムが混合する。ファビア・マントウィルはこれまでにタンザニア、ナミビア、ボツワナ、マラウイ、ガーナといったアフリカ諸国を訪れており、そこで出会った人々の優しさや快活さに刺激を受け、人生を肯定する作品を書きたいと思ったようだ。この曲にはタイトルにある通り、人生のすべての瞬間を受け入れ大切にし、楽しみ、その美しさに陶酔する様がポジティヴに表れている。
(5)「Erwachen」は穏やかなバラードで、ファビア・マントウィルのサックスがたっぷりと聴ける。甘美なヴィブラフォンに包まれ豊かに広がるサウンド。ここでも重層的に展開するオーケストラがとても効果的な演出をしている。
ファビア・マントウィル、ドイツに生まれた新たな才能
ファビア・マントウィルは1993年ドイツのケムニッツ生まれで、幼少期からギター、ピアノ、フルートなど様々な楽器を通じ音楽に親しんできた。現在はバンドリーダーや作編曲家としていくつかの異なるプロジェクトを進行しており、今作は2017年に結成し、ベルリンやハンブルクなどで公演を行なってきた自身の25名ほどの編成のオーケストラによる初のアルバム。オーケストラでの活動のほか、自らのクインテットを率いてのライヴ活動も行なっている。
既に世界各地で公演を行っており、今作で共演したミュージシャンのほか、これまでにタイショーン・ソーリー(Tyshawn Sorey)、ジェイソン・モラン(Jason Moran)、ヴィジェイ・アイヤー(Vijay Iyer)、エリック・ハーランド(Eric Harland)、リンダ・メイ・ハン・オー(Linda May Han Oh)、マーク・ジュリアナ(Mark Guiliana)、ファビアン・アルマザン(Fabian Almazan)といった現代を代表する音楽家たちとも関係を築いてきた。
驚愕の作品でデビューを飾ったファビア・マントウィルという新しい才能。これからの活躍にも大いに期待したい。
Fabia Mantwill Orchestra :
Fabia Mantwill – conductor, voice, saxophone
Anne-Sophie Bereuter – violin
Annabelle Dugast – violin
Julia Czerniawska – violin
Aaron Müller – violin
Christina Döring – violin
Jonathan Emilian Heck – violin
Maria Reich – viola
Johann-Vincent Slawinski – viola
Yağmur Atagür – viola
Liron Yariv – cello
Tabea Schrenk – cello
Igor Spallati – double bass
Tilmann Dehnhard – flutes, saxophone
Phillip Dornbusch – saxophone, flute, clarinet
Daniel Buch – saxophone, bass clarinet
Felix Meyer – trumpet, flugel
Konstantin Döben – trumpet, flugel
Jan Landowski – trombone
David Bernds – bass trombone, tuba
Milena Hoge – harp
Hauke Renken – vibraphone, marimba
Charis Karantzas – guitar
Thomas Kolarczyk – bass
Marc Michel – drums
Guest Soloists :
Kurt Rosenwinkel – guitar
Nils Landgren – trombone
Ben Wendel – tenor saxophone
Marcio Doctor – percussion
Tanzanian Kids Choir :
Careen Exaud William Mollen
Heavenlight Ezekieli Lazaro
Beatrice Richard Ndekunuo Shayo
Angela Ezekieli Lazaro
Catherine Elibariki Mushi
Megan Ndale