ブラジルの人気SSWマルー・マガリャエスの新譜は“希望”
ブラジル・サンパウロ出身のシンガーソングライター、マルー・マガリャエス(Mallu Magalhães)が5枚目のスタジオアルバムとなる『Esperança』をリリース。これまでの彼女の作品同様に耳馴染みの良いポップさが全面に出ていながら、ボサノヴァやサンバなど伝統的なブラジル音楽の下地をしっかりと感じさせ、メロウなローズピアノやトランペット、軽やかなパーカッションなどでジャジーに仕上げられた極上の作品になっている。
ポルトガル語と、一部スペイン語や英語で歌われる楽曲群はまるで陽だまりのような多幸感が満載。アルバムからの最初のヴィデオクリップである(11)「Quero Quero」では、彼女がインスタグラムで募集をかけたファンが家で踊ったり歌ったりする動画もつなぎ合わせ、世界を覆う苦しみからの現実逃避を試みる。どんな時代にも愛情や希望を失ってはいけないという彼女の想いはアルバムタイトルの“エスペランサ(希望)”に集約される。ソフトロックとボサノヴァの幸せな出会いとでも呼びたくなるような個々の楽曲からは夏日の海岸の微風に揺れるハンモック、人々の楽しげな笑い声、芳醇なフルーツの香り、延々と続いていく平和な日常…そんな“ノスタルジックな”光景が次々と浮かんでくる。
パンデミックはもうしばらく収まりそうにない。経済という大義名分のために払われる犠牲やその重みについて考えることからしばらく逃れるには、このような心穏やかで楽観的な音楽はとても役に立つ。
マルー・マガリャエス(Mallu Magalhães, 本名:Maria Luiza de Arruda Botelho Pereira de Magalhães)は1992年生まれ。アマチュア・ミュージシャンの両親のもと独学でギターなどの弦楽器やピアノの演奏を習得し、15歳の頃にMySpaceで自作曲を発表するようになるとたちまち話題となり、インターネットが生んだ新世代の歌姫として既存メディアで紹介されるなど人気者に。2008年、16歳でデビューアルバム『Mallu Magalhães』をリリース、翌年に『Mallu Magalhães』でメジャーデビューを果たした(ブラジルのミュージシャンはセルフタイトルの同名アルバムを何枚も出すことが多く、ややこしい)。
夫はリオデジャネイロ出身の人気SSW、マルセロ・カメーロ(Marcelo Camelo)。