ギターと声の極上デュオ作『Nó』
シンガーソングライターで卓越したギタリストでもあるジョヴァンニ・イアシ(Giovanni Iasi) と、同様にギターと歌をこなすルイーザ・ラセルダ(Luisa Lacerda)の素晴らしいデュオ作品『Nó』。この2人と、曲によってはゲストを加えた最大3人で綴られる音楽は数多のブラジル音楽の名盤の例に漏れずシンプルだがとてつもなく奥深い。
親密なようでいて緊張感を伴う男女デュオならではの機微の極致(1)「Lua Ri」、そしてジョヴァンニのガットギターに乗ってルイーザが風のように歌う(2)「Vivo a Vagar」の冒頭2曲を聴けば、ひっそりとリリースされたまま殆ど話題に上がらないこの作品が、いかに優れた音楽であるか気づいて頂けると思う。
多彩なゲストも魅力的
本作はゲストも多彩で、ブラジル北東部の土着のリズムを用いた(3)「Gaiata」にはハベッカ(ヨーロッパからブラジルに持ち込まれ、現在も広く演奏されているヴァイオリンの原型の楽器)を弾くエリジオ・フレイタス(Elisio Freitas)が参加し効果的なオブリガートを入れている。
(4)「Acalanto」にはジョヴァンニ・イアシが広く世に知られるきっかけとなったデュオの相方、ペドロ・イアコ(Pedro Iaco)がヴォーカルで参加しており、ルイーザ・ラセルダとのインティメイトで詩情溢れる魅力的なデュエットを聴かせてくれる。
少しおどけていながらも、中間部では美しい展開も見せるワルツ(5)「Valsa Fria」ではショーロの伝説的グループ、エポカ・ヂ・オウロ(Conjunto Época de Ouro)のバンドリン奏者ルイス・バルセロス(Luis Barcelos)が職人芸的な演奏で華を添える。
マリア・クララ・ヴァーリ(Maria Clara Valle)のチェロが室内楽の美しさで包み込む(6)「Nó」はギンガ(Guinga)を思わせる独創的な曲調が素晴らしい。
ラストを飾る優雅なワルツ(11)「Ilustre Desconhecida」にはブラジルが誇るギター・カルテット、クアルテート・マオガニ(Quarteto Maogani)が共演しており、幾重にも重なる弦の音とルイーザ・ラセルダの声のコンビネーションが穏やかで精神的に充実した午後を感じさせてくれる。
Giovanni Iasi – guitar, vocal
Luisa Lacerda – vocal
Guests :
Elisio Freitas – rabeca (3)
Pedro Iaco – vocal (4)
Luis Barcelos – bandolim (5)
Maria Clara Valle – cello (6)
Fernando Dalcin – bandolim (10)
Quarteto Maogani – guitar (11)