ステファニー・ジョーンズによる南米ギター音楽集
オーストラリア出身、現在はドイツを拠点に活躍する女性クラシック・ギタリストのステファニー・ジョーンズ(Stephanie Jones)の『Open Sky』(2020年)。アルバムタイトルはアルゼンチンの作曲家/ギタリストのキケ・シネシによる名曲(1)「Cielo Abierto(澄みきった空)」の英訳だ。
今作ではアルゼンチン、ブラジル、パラグアイなど南米の作曲家の名曲が取り上げられている。
ギターのボディをパーカッシヴに叩くなど斬新な表現もみせ、タンゴやサンバといった南米の土着音楽からも強く影響された楽曲群をギター一本で表情豊かに演奏。
選曲もとても良い。
(3)〜(6)のアストル・ピアソラ(Astor Piazzolla)、(7)(10)のジスモンチ(Egberto Gismonti)、(8)のジョビン(Antônio Carlos Jobim)といったポピュラーな有名どころをしっかりと抑え、マニアックになり過ぎずどの曲も名曲ばかり。バリオスの(11)「Una Limosna Por Amor De Dios(最後のトレモロ)」などはクラシックギターの魅力を際立たせる必聴ものの演奏だ。
ラスト2曲はセルジオ・アサド(Sergio Assad)とその娘クラリス・アサド(Clarice Assad)の曲を繋ぐ構成で、このあたりにステファニー・ジョーンズという若いギタリストの繊細な感性が表れているように思う。
とにかく、クラシックギター・ファンにはぜひ聴いてもらいたい素晴らしい一枚だ。
クラシックギターの魅力を発信するステファニー・ジョーンズ
ステファニー・ジョーンズはオーストラリアに生まれ、幼少期よりピアノ、ヴァイオリン、サックス、フルートなど多くの楽器を経験した後、クラシックギターでのソロ演奏の魅力に取り憑かれ、2014年にオーストラリア国立大学を卒業。同年にYoung Virtuoso of the Year賞を受賞した。
これまでにハナバッハ・ギター・コンペティション、ウプサラ国際ギター・フェスティヴァル・コンペティションで優勝するなど数々のコンクールで受賞。『Colours of Spain』(2015年)、『Bach, the Fly, and the Microphone』(2009年)の二枚のアルバムも残している。
現在はドイツで活動しながら、11万人の登録者を擁するYouTubeチャンネルでも様々なジャンルの曲をクラシックギターのソロにアレンジし投稿。まだ世間的に一般的ではないソロ・クラシックギターを広く認知させるべく活動している。
Stephanie Jones – guitar