イスラエルのギタリスト、ニツァン・バール新譜2枚同時リリース
イスラエルのジャズギタリスト/作曲家ニツァン・バール(Nitzan Bar)の新作はなんと自身でギターを弾き語る、ロック/フォークに傾倒したアルバムとなった。しかも2枚同時リリース。『Nitz A』『Nitz B』とストレートな名前を冠されたアルバムに若き天才ギタリストの原点が垣間見える。
兄のトメル・バール(Tomer Bar, 本作にも演奏で参加している)も若くして天才ジャズピアニストとしてデビューしたが、次第にシンガーソングライターとしてのアイデンティティを強め、2018年リリースの前作『לדעת הכל』は完全にネオソウルに傾倒した歌モノとなっていたが、弟ニツァンもどうやら似た傾向があるようだ。
しかし彼の場合、兄とはちょっとばかりサウンドの傾向が異なり、古風でストレートなロックに影響された音楽になっているのも興味深い。これは兄トメルがピアノ/キーボード、弟ニツァンがギターという異なる楽器を選択し、それぞれ道を極める過程で影響を受けたアーティストがまるっきり異なるということなのだろう。
ニツァン・バールの新譜は欧米のロックやフォークだけでなく、イスラエルで人気のSSWからの強い影響も感じられる。
曲によってはアロン・エデル(Alon Eder)あたりを彷彿させる、確かなソングライティングと歌はこれまでに彼が見せてきた超絶技巧のジャズとはまた異なる類稀なセンスだ。これは、天才ジャズギタリストが余興でちょっと歌ってみた、程度のレベルではないぞ…。
まずはシングルカットされた(A-4)「נגמר?」、MVも作られた(B-3)「יום חדש」は必聴。
もう彼の肩書きは「ジャズギタリスト」だけでは収まらなくなりそうだ。
Nitzan Bar 略歴
ニツァン・バール(ヘブライ語:ניצן בר)は1998年生まれ。プロのギタリストである父アチャ・バール(Atcha Bar)の指導の元、早くからその才能を開花させ12歳でジャズ・スタンダード「Donna Lee」を演奏する動画などがSNSでも話題となった。
自身のリーダー作のほか、イスラエルを代表するサックス奏者ダニエル・ザミール(Daniel Zamir)など数多くのアーティストと共演。若い世代を代表するギタリストとして注目を集めている。