仏ピアニスト/俳優、アンドレ・マヌーキアンと6人の女性歌手が演じるゲンスブール曲集

André Manoukian - Les pianos de Gainsbourg

フランス名物ピアニスト新譜はセルジュ・ゲンスブール・トリビュート

アルメニア系フランス人ピアニスト/俳優のアンドレ・マヌーキアン(André Manoukian)の新譜『Les pianos de Gainsbourg』セルジュ・ゲンスブール(Serge Gainsbourg)の没後30周年を記念したトリビュートアルバム。6人の女性ヴォーカリストを迎え、数々のゲンスブールの名曲を歌とピアノを中心に雰囲気たっぷりに聴かせる。

ゲンスブールの代表曲といえる(1)「La Javanaise」を歌うのはメロディ・ガルドー(Melody Gardot)。原曲は女優ジュリエット・グレコの邸宅でレコードを聴きシャンパンを飲み過ごしたゲンスブールが一晩のうちに書き上げて翌日にグレコに捧げた曲で、1963年にグレコとゲンスブールにより発表されて以降、数々の歌手によって歌われている名曲だ。
ここでは交通事故から奇跡的な回復を遂げたことでも知られるメロディ・ガルドーによる情感豊かな歌唱と、アンドレ・マヌーキアンの詩的なピアノのみで演奏されている。

メロディ・ガルドーが歌う(1)「La Javanaise」

女優/作曲家エロディ・フレージュ(Élodie Frégé)が歌うのは(3)「Ce Mortel Ennui」(死ぬほど退屈)。1964年の原曲のMVではゲンスブールがたくさんの美女たちに囲まれ彼らしい退廃的な詩を歌っていた。

ゲンスブールが1962年に発表した(4)「Black Trombone」は新世代の歌姫カメリア・ジョルダナ(Camelia Jordana)が歌う。

ゲンスブールのデビューとなった(5)「Le Poinçonneur des Lilas」(リラの門の切符売り)はピアノ、ベース、ドラムス、パーカッションのカルテットで。

ジェーン・バーキンの1983年のアルバムがオリジナルの(6)「Baby Alone In Babylone」は女優/歌手のカミーユ・ルルーシュ(Camille Lellouche)が歌う。少しハスキーな彼女の声はゲンスブールの好みでもあるのではないだろうか。

(8)「Sous le Soleil Exactement」を歌うイザベル・アジャーニ(Isabelle Adjani)は今作で参加している豪華歌手陣のなかで、もっとも往年のジェーン・バーキンの声や歌い方を思い起こさせてくれる存在だ。実は彼女は1983年にゲンスブールのプロデュースにより歌手デビューを果たしている。

(10)「La chanson de Prévert」は歌手ローズマリー・スタンドリー(Rosemary Standley)と。

アルバムのラスト(12)「Je Suis Venu Te Dire Que Je M’en Vais」(君に別れを告げに来た)も良い。これは1973年にセルジュ・ゲンスブールが心臓発作で倒れた時に書かれた曲で、この一件以降も飲酒や喫煙を止めることができず妻ジェーン・バーキンとの関係も悪化していく。

フレンチ・ポップの始祖とも言えるセルジュ・ゲンスブールによって作られたよく知られた曲には、ジェーン・バーキン、フランス・ギャル、ブリジット・バルドーといった歌い手の魅力との相乗効果をあからさまに狙ったようなチープなものもあるが、本作は選曲も良く、作曲家、そして一人の人間としてのゲンスブールの魅力に迫っているように思う。没後30年が経過した今もなお、彼が遺した数々の楽曲を通してその無二の生き様が伝わってくるようだ。

アンドレ・マヌーキアン略歴

ピアニスト/作編曲家のアンドレ・マヌーキアン(André Manoukian)は1957年フランス・リヨン生まれ。2002年から2017年の間にフランスのポップアイドル・オーディション番組『Nouvelle Star』の審査員として出演し人気を博した。

7歳のときにピアノを始め、米国バークリー音楽大学でジャズや作曲を学び、帰国後は作編曲家/ピアニスト/プロデューサーとして様々なアーティストと活動をし、ミシェル・ペトルチアーニ、リシャール・ガリアーノ、シャルル・アズナヴールといった著名な音楽家とも仕事を共にしている。

ピアノトリオ編成で演奏される(2)「L’eau à la Bouche」

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