ビョーク名曲カヴァーも。ルネサンス・ヴァイオリンが豊かに響くアダム・バウディヒ新譜

Adam Baldych - Poetry

パオロ・フレスがゲスト参加!鬼才アダム・バウディヒ新作

ポーランド随一ののジャズヴァイオリン奏者/作曲家アダム・バウディヒ(Adam Baldych)が自身のカルテットに加え、イタリアの名トランペッター、パオロ・フレス(Paolo Fresu)を迎え制作した新譜『Poetry』。アイスランドの歌姫ビューク(Björk)の名曲をカヴァーするなど野心的な作品であるとともに、ヴァイオリンの天才と讃えられた彼の新たな魅力を存分に引き出す傑作になっている。

これまでの彼のリーダー作ではほぼ自身のみがソロを取り、朗々と雄弁にヴァイオリンで歌いあげることが多かったアダム・バウディヒだが、今作では表題曲(5)「Poetry」に象徴されているようにトランペットのパオロ・フレスとの即興での関係は“対等”。これまでのように膨大な量の音符を生み出すヴァーチュオーゾであることを止め、ヴァイオリンという楽器を通して“物語を語る”ことに重点を置くように進化した姿を見せている。今作ではチェロのようなふくよかな音色を持つルネサンス・ヴァイオリンを多用していることにも象徴的だ。

その姿勢の表れとも言えるのが、本作唯一のカヴァーである(6)「Hyperballad」だろう。
広く知られたビョークを代表する名曲だが、メロディーもコードも単調だし、この曲はビョーク独特の声やあのサウンドがあってこそ成り立つものであってカヴァーには向かないと思っていた。…が、その認識は間違っていたようだ。
原曲の雰囲気を大切にしたドラムス、ベース、ピアノに乗ったアダム・バウディヒのヴァイオリンはときに艶やかに掠れ、共演するマレク・コナルスキ(Marek Konarski)のテナーサックスとともに抒情的な音空間を創り上げることに成功している。そしてこの音は紛れもなくアダム・バウディヒのものであり、ビョークの精神的カオスな世界観ともまた違った魅力を持った音楽になっているのだ。

(5)「Poetry」でルネサンス・ヴァイオリンを演奏するアダム・バウディヒ

そして今作の大きなトピックであるパオロ・フレス。1961年生まれ、イタリアを代表するジャズトランペッターであるパオロ・フレスは(1)「Heart Beats」、(10)「Open Sky」など全11曲中5曲でトランペットまたはフリューゲルホルンを演奏している。彼の出番はそれほど多いわけではないが、力強さと温かさを併せ持った素晴らしい音色とアドリブを聴くことができる。

過去3年間活動をともにしてきたカルテットでの演奏も本当に素晴らしい。
(3)「Stars」、(4)「Teodor」などどの曲でもピアノのクシュストフ・ディスKrzysztof Dys)、ベースのミハウ・バランスキMichał Barański)、ドラムスのダヴィド・フォルトゥナDawid Fortuna)による随所に繊細な技が散りばめられた絶品のアンサンブルが楽しめる。カルテットのメンバーはいずれも1980年代生まれでアダム・バウディヒとも同年代のようだ。

アダム・バウディヒ 略歴

アダム・バウディヒは1986年ポーランド西部の都市ゴジュフ・ヴィエルコポルスキに生まれた。
ヴァイオリンは9歳の頃から学びはじめ、13歳でジャズに傾倒、16歳の頃よりプロとしての活動を始め“ジャズヴァイオリンの革新者”として世界にその名を轟かせた。

2012年に権威あるドイツのレーベル、ACT MUSICからデビュー作『Imaginary Room』を発表。これまでにヤロン・ヘルマン(Yaron Herman)、ヘルゲ・リエン(Helge Lien)、イーロ・ランタラ(Iiro Rantala)など多数の名手たちと共演。ヴァイオリンという楽器が持つポテンシャルを限界まで高める圧倒的な表現力を備えた現代最高峰の演奏家として評価されている。

数年前から通常のヴァイオリンよりも一回り大きく、7度ほど低く調弦されたルネサンス・ヴァイオリンを演奏に多用するようになっており、前作『Clouds』でもその豊かな音色を楽しむことができる。

Adam Bałdych – violin, renaissance violin
Paolo Fresu – trumpet, flugelhorn
Marek Konarski – tenor saxophone
Krzysztof Dys – piano
Michał Barański – double bass
Dawid Fortuna – drums

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