【特集】カーボベルデ・郷愁の音楽「モルナ」の歌姫たち

Diva of Cabo Verde

カーボベルデの音楽「モルナ」とは

西アフリカのセネガルから西に375kmの大西洋の真ん中、大小18の火山島からなる島国カーボベルデ(Cabo Verde)。国名は「緑の岬」の意味だ。

カーボベルデの歴史は15世紀の大航海時代から始まる。
ヨーロッパ、アフリカ、そしてアメリカ大陸それぞれの中間に位置するカーボベルデは貿易の中継地として栄え、人々が交流するなかで様々な文化が自然に混ざり合い、独特のクレオール文化が生まれた。

混合文化から生まれたカーボベルデの音楽を語る上でキーワードとなるのが同国でもっとも広く親しまれている「モルナ(morna)」と呼ばれる音楽ジャンルだ。故郷や家族に対する想いが歌われることが多く、奴隷貿易や植民地時代の抑圧された環境が背景にある情緒的な音楽で、セザリア・エヴォラ(Cesária Évora)という女性歌手が世界的に有名にしたジャンルでもある。
モルナのような伝統的な音楽は出稼ぎでポルトガルやブラジルなどに出ていった在外カーボベルデ人にとっても文化的な拠り所となっており、現在でも脈々と受け継がれている。

今回はそんなカーボベルデの昔ながらのポピュラー音楽「モルナ」の歌い手たちとその代表作を厳選したプレイリストとともに紹介したい。伝統音楽といっても多くは近代的なポップスとも融合しており、聴きやすさと混合文化からくる独特の哀愁感を併せ持ったなかなか心に刺さる音楽だと思う。SpotifyとApple Musicのプレイリストは記事の最後に掲載。

セザリア・エヴォラ(Cesária Évora)

カーボベルデを代表する歌手、セザリア・エヴォラ(Cesária Évora, 1941 – 2011)はモルナを世界に広めた立役者。
サン・ヴィセンテ島の漁村に生まれ、10歳の頃からは孤児院で育ち、島の数軒の酒場で歌い続けていた歌手で、40代にしてプロデューサーのホセ・ダ・シルヴァに見出され1992年に「Sodade」が大ヒット。2003年にグラミー賞を受賞するなど、“裸足のディーヴァ”“モルナの女王”として2011年に亡くなるまでに広く世界中から愛された。

「Angola」

テテ・アリーニョ(Tété Alhinho)

テテ・アリーニョ(Tété Alhinho, 1956 – )はセザリア・エヴォラと同じくサン・ヴィセンテ島のミンデロ出身の歌手。幼少時から歌うことが大好きで、時には一晩中月明かりの下で歌って過ごしたこともあったそうだ。1989年にポルトガルで最初のアルバムをリリース。セザリア・エヴォラとともにモルナの音楽シーンをリードしてきた存在。

テテ・アリーニョ「Dia C’Tchuva Bem」

ナンシー・ヴィエイラ(Nancy Vieira)

カーボベルデ出身の両親のもと、ギニアビサウに生まれたナンシー・ヴィエイラ(Nancy Vieira, 1975 – )。
モルナやコラデイラといった伝統的なカーボベルデの音楽だけでなくブラジルやカリブ海周辺の音楽からも影響を受けている。

ナンシー・ヴィエイラ「Maylen」

ジェニフェル・ソリダーデ(Jenifer Solidade)

ジェニフェル・ソリダーデ(Jenifer Solidade, 1984 – )もセザリアらと同じくミンデロの出身。
本記事でも紹介しているナンシー・ヴィエイラやマイラ・アンドラーデといった歌手のバックシンガーとしてプロのキャリアをスタートし、2015年にソロデビューアルバム『Um Click』をリリースし人気となった。

ジェニフェル・ソリダーデ「Ariah」

マイラ・アンドラーデ(Mayra Andrade)

キューバのハバナに生まれ、世界各国を転々と移り住んできたマイラ・アンドラーデ(Mayra Andrade, 1985 – )は2006年にアルバム『Navega』でデビューしたカーボベルデの歌手。モルナも歌うがポップ寄りのサウンドも多く、ブラジル音楽などの影響も色濃い、現在最もカーボベルデで人気のある歌手のひとり。

マイラ・アンドラーデの「Afeto」

ルシベラ(Lucibela)

サン・ニコラウ島生まれのルシベラ(Lucibela, 1986 – )だが、幼少時に家族でサン・ヴィセンテ島のミンデロに引っ越し、そこで歌へ情熱を傾けた。ホテルで観光客向けの歌手として活動したあと、ポルトガルのリスボンに移住し2016年にデビュー。

ルシベラの「Curpim Sab」

エリーダ・アルメイダ(Elida Almeida)

エリーダ・アルメイダ(Elida Almeida, 1993 – )はサンティアゴ島の電気さえ通っていない貧しい農村で生まれ育った。音楽が好きだった彼女の楽しみは電池式のラジオで歌を聴くこと。幼い頃に父を亡くし、母親の行商を手伝いながら教会で歌った。高校在学中から曲を書き始めたが、16歳でシングルマザーになるなど波乱の人生を歩んできた。
作風はサンティアゴ島で好まれるアフリカ色の強いフナナやバトゥーケといった種類の音楽の影響も強く受けている。

エリーダ・アルメイダ「Tomam El」

カーボベルデのディーヴァたちのプレイリスト

クレオール文化が生んだ大西洋の島国カーボベルデの魅惑の音楽「モルナ」。まるでカーボベルデに文化と恵みをもたらした海のように、あるいは彼女らの人生そのもののように、深く美しい歌姫たちの歌声をお楽しみください。

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