ディストピア・ポップの女王ノガ・エレズ、“非電子”の『KIDS』リアレンジ盤が驚くほど素晴らしい!

Noga Erez - KIDS (Against the Machine)

ノガ・エレズ、大ヒット前作『KIDS』のリアレンジ版をリリース

2021年3月にリリースされた前作『KIDS』から約半年。イスラエルの新世代オルタナティヴ・ポップを象徴するSSWノガ・エレズ(Noga Erez)が前作収録曲をリアレンジした『KIDS (Against the Machine)』をリリースした。『KIDS』制作と並行して進んでいた非エレクトロニックのプロジェクトで、彼女の新たな魅力を映し出しつつもノガ・エレズ以外では考えられないような個性的なサウンドの作品となっている。

昨年から既に公開されていた(5)「Views」、(12)「No News on TV」といった楽曲に加え、『KIDS』の曲を一切の電子楽器やプログラミングを使用せずにアレンジ。アコースティックなピアノ、アコースティック/エレクトリックギター、サックスやトロンボーンといった楽器、さらにはハンドクラップや声(25人の子供たちによるクワイアも!)で再構築されたノガ・エレズの世界観には圧倒されるばかり。単なるリアレンジに留まらない作品に仕上がっているところは流石だ。電子音楽に抵抗があるような場合はこちらの作品の方が聴きやすいだろうし、アーティストとしての個性やポップさという点においても今最高に面白いイスラエルの音楽シーンの入り口として全力でおすすめできる内容に仕上がっている。

いくつか公開されているMVはどれも魅力的なので、ぜひ観てもらいたい。

(5)「Views」

随所に極めて強い存在感を示す公私でのパートナーであり共作者/プロデューサーであるオリ・ロウソ(Ori Rousso)はもちろんのこと、今作にもイスラエルの優れたミュージシャンが多数参加。電子的な音を排することで生まれる異様な生々しさはノガ・エレズの個性をさらに引き立て、テルアビブに生まれ育った者が避けては通れない巨大な力による戦争と平和、その中に生きる人々の生活をある種の諦観に似たメッセージは妙に強い説得力を持って目と耳に届く。

(12)「No News on TV」

ノガ・エレズ 略歴

ノガ・エレズ(Noga Erez, ヘブライ語:נגה ארז)は1989年イスラエル生まれのシンガーソングライター、プロデューサー。2017年に「Dance While You Shoot」がAppleの広告に採用されたことで一躍時代の人となった。

エルサレム音楽舞踊アカデミー(Jerusalem Academy of Music and Dance)で作曲を学び、様々なバンドでヴォーカリスト、キーボード奏者、パーカッショニストとして活躍。イスラエル国防軍での兵役中は軍楽隊の一員にもなった。

アルバムデビューは2017年の『Off the Radar』。2021年に待望の2作目『KIDS』をリリース。

彼女の音楽はオルタナティブ、エレクトロニカ、ヒップホップなどに大きな影響を受けており、そして暗喩的に政治的でもある。フライング・ロータス、ビョーク、フランク・オーシャン、ケンドリック・ラマーといった音楽家をお気に入りとして挙げているが、既にノガ・エレズという個性は唯一無二の高みに達している。

(6)「You So Done」
(3)「End of the Road」
(4)「Knockout」

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