ミナスのSSWレオポルヂーナ、多様性を大きな包容力で優しく覆う傑作新譜
ブラジル・ミナスのシンガーソングライター、レオポルヂーナ(Leopoldina)の新作『Semente Crioula』がリリースされた。この作品は彼女がマリーザ・モンチやアドリアーナ・カルカニョットらのようなMPB(ブラジルのポピュラー音楽)の正統派女性シンガーソングライターの系譜にあり、リスナーの文化的背景の違いにかかわらず人間の普遍的な感覚に共鳴する音楽をつくることができる稀有な才能の持ち主であることを見事に証明する傑作だ。
12の楽曲は豊穣なブラジルの音楽から生まれた瑞々しい結晶のようだ。ブラジルで育まれた音だけではなく、アフリカや北アメリカからもたらされた音楽も自然に取り入れられており、繊細すぎず大胆すぎず、限りなく大きな包容力で包み込む。アルバムタイトル“クレオールの種”はこの作品の内容を的確に表現している。先住民と移民が混ざり合う多様性の坩堝のような国ブラジルだからこその優しさがここにはある。
画家としての顔も持つレオポルヂーナは今作の各楽曲でのイメージを絵に描いている。それは音楽が色彩感覚を増強させる不思議な現象をできるだけ具現化させるためのものであり、例えば(1)「Amor de Nanã」はこんな絵のイメージなのだそうだ──
この絵画のイメージにあるように、レオポルヂーナの音楽の根幹には水や光、種から芽吹く草木のイメージがある。生命力と希望、喜び、愛する心。どんな時代にあっても人が生きる力としている大切なもの。この母性的な優しさに満ちた素晴らしい作品からは、どんな時代にあっても困難を乗り越え力強く生きていくための温かいメッセージが伝わってくる。