父娘デュオによる完璧な“声とギター”
ギタリストのアルトゥール・ネストロフスキ(Arthur Nestrovski)と、歌手のリヴィア・ネストロフスキ(Lívia Nestrovski)の父娘デュオの『Sarabanda』は、大袈裟に言ってしまえば時空を超えた音楽の贈り物のような作品だ。
J.S.バッハの(1)「Sarabanda」に始まり、シューマンの(2)〜(5)、サン・サーンスの(6)「Cisne(白鳥)」と西洋クラシックのアレンジが続いたかと思えば(7)「Mais Simples」はゼー・ミゲル・ウィズニキ(José Miguel Wisnik)、(8)〜(13)はアルトゥールのオリジナル、そしてフランシス・ハイミの(14)「Anoiteceu」を挟んで再びバッハやシューベルトに戻るという構成で、ガットギターと歌のみというシンプルな編成──そしてその編成は、おそらく最も美しくブラジル音楽を表現する編成だ──でクラシックとブラジル・ポピュラー音楽の境界を完全に溶かしている。
丁寧でゆったりと落ち着いたアルトゥールのガットギターの演奏に、同じように心を落ち着かせてくれるリヴィアの見事な歌唱。温かく空間を包み込んでくれるような感覚がとても心地いい。
ギタリスト/作曲家のアルトゥール・ネストロフスキは1959年リオグランデ・ド・スル州都ポルト・アレグレ生まれ。1990年に米国アイオワ大学で文学と音楽の博士号を取得し、クラシック音楽の評論家や編集者、大学教授を務めながら2010年代から音楽活動を本格化したという異色の経歴の持ち主で、2010年からサンパウロ交響楽団の芸術監督も務めている。
アルトゥールの娘で歌手のリヴィア・ネストロフスキは1988年米国アイオワシティ生まれ。ジャズやMPB(ブラジルのポピュラー音楽)のスタイルを得意とする。
父娘デュオとして2016年に『Pós Você e Eu』をリリースし、高く評価された。
Arthur Nestrovski – guitar, vocal
Lívia Nestrovski – vocal