焼失したブラジルの歴史の記憶が宿るバンドリンで紡がれる音楽たち

Hamilton de Holanda - Maxixe Samba Groove

名手アミルトン・ヂ・オランダ新譜『Maxixe Samba Groove』

ブラジルのバンドリンの名手アミルトン・ヂ・オランダ(Hamilton de Holanda)の新譜 『Maxixe Samba Groove』は、後述する深い経緯いきさつのあるバンドリンで美しく楽しく、そしてほんの少しのサウダーヂが混ざり合った素敵なアルバムに仕上がっている。

(1)「Choro Fado」ではインドの歌手ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル(Varijashree Venugopal)をフィーチュア。曲名にはブラジルのショーロ、ポルトガルのファドが冠されているがインド風味もかなりの割合で混ざり不思議な感触に。

鬼才アントニオ・ネヴィス(Antonio Neves)のちょっと惚けたようなトロンボーンとリズムが楽しい(3)「Bruzinho」、アミルトンの息子ガブリエル・ヂ・オランダ(Gabriel de Holanda)が父と同じ楽器で参加した(5)「Luz de Vida」 、米国を代表するジャズサックス奏者クリス・ポッター(Chris Potter)をフィーチュアした(6)「Afro Choro」などなどバラエティ豊かな楽曲を楽しめるが、やはり最も耳を奪われるのはアミルトンの相変わらずの超絶技巧。テクニックも歌心も兼ね備えたソリストの演奏を聴く幸せがぎっしり詰まった作品だ。

(1)「Choro Fado」

2018年に焼失したブラジル国立博物館の遺材から作られたバンドリン

この作品で演奏されているアミルトンのバンドリンは、2018年9月にほぼ全焼したリオデジャネイロのブラジル国立博物館の火事後に散らばっていた木材の破片から作られている(この火事では2000万点以上あった貴重な収蔵品がほぼ失われ、約200年前に建造され老朽化していた建物の補修に充分な予算をかけてこなかった当時の政府が非難を受けている)。

200年もの間ブラジルの遺産を見守ってきた木材を、弦楽器製作者で博物館の消火にも関わった消防士でもあるダヴィ・ロペス(Davi Lopes)がバンドリンとして蘇らせ、アミルトンはその楽器で無形のブラジルの遺産を奏でているのだ。そんな物語を知ると、明るく軽快な(9)「Tá Nascendo Flor no Asfalto」(アスファルトに咲く花)にも諸行無常の趣が感じられる。

楽器製作者/消防士のダヴィ・ロペスが焼け落ちた木材を楽器として蘇らせる物語は『Fênix – O Voo de Davi』というドキュメンタリー映画になる。

Hamilton De Holanda – bandolim
André Vasconcellos – bass
André Siqueira – percussion
Antonio Neves – drums, trombone

Guests :
Varijashree Venugopal – vocals (1)
Gabriel de Holanda – bandolim (5)
Bento Tibúrcio Mendes – contrabass (5)
Chris Potter – saxophone (6)

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