イスラエルの巨匠二人を中心とするジャズ好盤
ギタリストのエロン・テルグマン(Elon Turgeman)と、ピアニストのアヴィ・アドリアン(Avi Adrian)。
まだ“イスラエルジャズ”が国際的に広く注目を浴びる前からイスラエル国内で長く活躍するジャズの第一人者である二人が、ベーシストのヨライ・オーロン(Yorai Oron)とドラマーのオフリ・ネヘミヤ(Ofri Nehemya)を迎えたカルテットで録音した2021年作『Twins』。
(1)〜(3)がアヴィ・アドリアンの作曲、スタンダードの(4)「My One and Only Love」を挟んで(5)〜(9)がエロン・テルグマンの作曲となっており、トラディショナルなジャズに根ざしつつ心地よいセッションが繰り広げられる好盤だ。アップテンポの曲が多く、圧倒的なセンスで魅せるアドリブも聴きどころ満載で、少しオーバードライブのかかったコンテンポラリーなギターの音色も堪らない。さらに特筆すべきは近年急速に頭角を現し、既にイスラエル新世代を代表するドラマーとして認知されつつあるオフリ・ネヘミヤの存在で、巨匠のアンサンブルを引き立てつつも、時には煽るようなドラミングは見事だ。
Elon Turgeman (gt) プロフィール
ギターのエロン・テルグマンは1960年にモロッコ出身の音楽家の両親のもとエルサレムに生まれた。幼少期からモロッコの伝統的な音楽が身の回りには常にあり、そしてギターは彼にとって最も面白いおもちゃだったという。
12歳の頃からギターを本格的に学び始め、14歳の頃にロックバンドを始めラジオでシングルをリリースすることもあったそうだ。最初の音楽的な影響はB.B.キング、ジミ・ヘンドリックス。そしてウェス・モンゴメリーやジム・ホール、マイルス・デイヴィスを聴いてジャズを志すようになり、1984年に米国バークリー音楽大学に入学した。
1990年代頃から主にイスラエル国内で活動しており、同国で最も傑出したギタリストとしてリスペクトされている。
Avi Adrian (p) プロフィール
ピアノのアヴィ・アドリアンは独学でピアノを学び、軍役時代はイスラエル国防軍オーケストラの指揮者も務めた。
リモン音楽学校、エルサレム音楽舞踏アカデミーなどで講師として勤める傍ら、演奏家としても小編成からオーケストラまで様々なジャズアンサンブルで活躍。2007年にイスラエル首相賞・ジャズ作曲家賞を受賞した。
ピアノトリオで録音した『Songs From A Dream』(2019年)は、音楽や映画制作などで並外れた才能を持ちながら小児癌のため2019年の春に19歳で亡くなったアダール・ブロシ(Adar Broshi)に捧げられている。
Elon Turgeman – guitar
Avi Adrian – piano, keyboards
Yorai Oron – bass
Ofri Nehemya – drums