ジャズオーボエ奏者“Oboman”と、ディジュリドゥに魅せられた男の共演
Obomanこと木管奏者のジャン=リュック・フィヨン(Jean-Luc Fillon)と、ディジュリドゥ奏者のオセロ・ラヴェス(Othello Ravez)によるジャズ・オーボエとディジュリドゥという珍しい編成のアルバム『Obodji』。
スタンダードとオリジナルを半々ずつ計10曲、なかなか面白い音楽体験ができるジャズ作品だ。
スタンダードはファッツ・ウォーラーの(1)「Black and Blue」、ハロルド・アーレンの(2)「It’s Only a Paper Moon」、デューク・エリントンの(5)「Caravan」、モンゴ・サンタマリアの(8)「Afro Blue」といったジャズでよく知られた曲と、さらに興味深いところではムソルグスキー「展覧会の絵」の(7)「Il vecchio castello(古城)」も取り上げている。このムソルグスキーはディジュリドゥとオーボエの旋律が絶妙にマッチしていてとても良い。
(3)「Los Bilbilicos」などその他の楽曲は木管楽器、特にオーボエの専門家でありベース奏者/作曲家/指揮者としても活躍するジャン=リュック・フィヨンの作曲。楽曲によってはオーボエの他にバスクラリネットやイングリッシュホルンなども多重録音し、楽器の素朴で温かい独特の音色や、中東音楽や地中海の伝統音楽の影響も感じさせるメロディーが心地よい。
録音は木の楽器そのものの音というか、過剰にディジュリドゥの低音や倍音を強調せずに自然なミックスになっている点も好感度が高い。過去20年間ディジュリドゥの研究を続け、この神秘の楽器をジャズやロックなど現代の音楽と融合させたいと情熱を燃やし続けてきたというオセロ・ラヴェスの演奏は多様なヴァリエーションを秘めており、改めてディジュリドゥという楽器の可能性も感じることができるだろう(オセロ・ラヴェスは演奏家であると同時に音楽療法士としての顔も持っている)。
Jean-Luc “Oboman” Fillon – oboe, oboe d’amore, English horn, bass clarinet, percussion
Othello Ravez – didgeridoo, percussion