強靭な声とトランペットで注目される南アの新星 Mandisi Dyantyis
トランペットとコサ語のヴォーカルで唯一無二の才能を開花させた南アフリカのマンディシ・デャンティス(Mandisi Dyantyis)が、個人的に大きな感銘を受けたデビュー作『Somandla』(2018年)に続く待望の2nd『Cwaka』をリリースした。前作で驚かされた唯一無二の強靭なヴォーカルは今作でもたっぷりと披露されており、さらにスケールを増している。
ヴォーカルのみで構成された(1)「Umbuliso」から圧巻だ。これほどまでに力強い歌は、凡百の歌手を軽く凌ぐ。少しラテン風味の(2)「Impumelelo」からは南アフリカのジャズシーンの充実ぶりを伺わせる素晴らしいバンドで、マンディシ・デャンティスはトランペットとヴォーカルをたっぷりと聴かせてくれる。
演奏メンバーはテナーサックスのバディ・ウェルズ(Buddy Wells)、ピアノは曲によって奏者が異なるがアンドリュー・リリー(Andrew Lilley)とブレイク・ヘラビー(Blake Hellaby)が前作に引き続き参加。
他に今回が初共演となるピアニストのロンワボ・マファニ(Lonwabo Mafani)、ベースのスティーヴ・デ・ソウザ(Steve De Sousa)、ドラマーのケヴィン・ギブソン(Kevin Gibson)という布陣。曲によってはストリングスも聴こえる。
アルバムタイトルは『出エジプト記』の14章14節の一節に因んでいる。
主があなたがたのために戦われるから、あなたがたは黙していなさい
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マンディシ・デャンティスによると、このアルバムは人それぞれの経験がどのようにその人を形作るかについてをテーマにしているという。経験がもたらす絶望や幸福感、さらにはそうした様々な経験を持つ人々が集まって形成されている社会の成り立ち──。どんな苦境にあっても諦めない人間の強い精神力や回復力についての音楽なのだ。
そうした強いメッセージは、確かに彼の音楽の中に息づいている。コサ語で歌われる歌詞の内容はまったく分からないが、彼の生命力の沸る歌からは言葉を超えた人類共通の想いが直接伝わってくる。
Mandisi Dyantyis – trumpet, vocals
Buddy Wells – saxophone
Steve De Sousa – double bass
Lonwabo Mafani – piano
Andrew Lilley – piano
Blake Hellaby – piano
Kevin Gibson – drums