ヴィクター・グールド、時代を反映する3rdアルバム『In Our Time』
米国の若手実力派ピアニスト、ヴィクター・グールド(Victor Gould)の3枚目の作品『In Our Time』(2021年)。全体的に複雑なハーモニーを多用したハードバップに強く影響された作品で、スリリングな即興が楽しめる優れたジャズアルバムとなっている。
ほとんどがオリジナルの今作には2曲のトリビュート曲が含まれている。
(2)「Lord Wallace」は新型コロナ感染症により59歳で亡くなったトランペット奏者の故ウォレス・ルーニー(Wallace Roney)に、(3)「Dear Ralph」は癌による合併症のため58歳で亡くなったドラマーの故ラルフ・ピーターソン・ジュニア(Ralph Peterson Jr.)に宛てられたもので、いずれもヴィクター・グールドが深く関わったミュージシャンだった。
マスクをつけて演奏するMVからも伝わってくるように、アルバムタイトルは社会情勢を反映した彼の想いだ。
(6)「Queen Alma」はソロピアノでの演奏。
基本的にピアノトリオ編成だが、(8)「Infant Eyes」はウェイン・ショーター(Wayne Shorter)の曲のカヴァーで、ゲストに人気サックス奏者のデイナ・ステファンズ(Dayna Stephens)が参加している。さらにラストを飾る(11)「In Memoriam」にはピアノトリオに加え弦楽四重奏をフィーチュアし、作編曲家としての新たな境地を見せる。
Victor Gould プロフィール
ヴィクター・グールドは1980年ロサンゼルス生まれ。4歳からピアノを始め、奨学金を得てバークリー音楽大学で学び、2006年にセロニアスモンク国際ピアノコンクールで準決勝進出、2009年にはASCAP財団のヤングジャズ作曲家賞を受賞している。2016年のデビューアルバム『Clockwork』はNPR Jazz CriticsPollでベストデビューアルバムに選出された。これまでにエスペランサ・スポルディング、テレンス・ブランチャード、ブランフォード・マルサリス、ニコラス・ペイトンといったアーティストと共演を行なっている。
Victor Gould – piano
Tamir Shmerling – bass
Anwar Marshall – drums
Guests :
Dayna Stephens – tenor saxophone (8, 9)
Yoojin Park – violin (11)
Monica Martin – violin (11)
Erica Gailing – viola (11)
Dale Jeong – cello (11)