現代版“街角クラブ”な大傑作!ミナスのSSWペドロ・サントス、突出したクオリティのソロデビュー

Pedro Santos - Feliz Cidade

ミナスのSSWペドロ・サントス、渾身のソロデビュー作『Feliz Cidade』

ブラジル・ミナスジェライス州のSSW、ペドロ・サントス(Pedro Santos)のソロデビューアルバム『Feliz Cidade』は、常にハイクオリティな音楽家を輩出しつづける彼の地の新たなタレントの登場を華々しく祝福する必聴盤だ。

ビートルズ以降のロックからの影響、クラシカルな室内楽、ジャズの即興要素、複雑で斬新な楽曲構成、そして穏やかで詩的なヴォーカル……一般にいわれる“ミナス新世代”の特徴として共通しているのはこのような要素、つまりポップスとしての圧倒的な完成度の高さのように思うが、ペドロ・サントスの音楽はそれら全てを兼ね備えた、見事な“現代版街角クラブ”に仕上がっている。

演奏者のクレジットを眺めてみてもカミラ・ホーシャ(Camila Rocha)、ブルーノ・ヴェローゾ(Bruno Vellozo)、ルイーザ・ミトリ(Luísa Mitre)、ナターリア・ミトリ(Natália Mitre)、マルコス・ルファート(Marcos Ruffato)、ガブリエル・ブルース(Gabriel Bruce)といったミナス界隈の近年の重要人物が多数参加しており、参加ミュージシャンの総勢は30名に及ぶ。
この界隈の優れた音楽家同士の強い横のつながりから生まれる幸せな化学反応が最大限に表れているといっても過言ではないだろう。

まずは(2)「Feliz Cidade」。MVも素晴らしいのでぜひ下の動画も観ていただきたいが、街の雑踏の音に同化したルイーザ・ミトリのピアノに導かれ、飾らない自然さが魅力的なペドロ・サントスのヴォーカルが加わる。リズムセクションが加わり、2ndヴァースでは女性SSWグラウ・ナデル(Glaw Nader)も参加。6/8拍子から4/4拍子のタイム感に切り替わる4:12頃からは今作のプロデューサーを務めたルイス・カンポレス(Luiz Camporez)によるギターソロも音色・フレーズともに強く印象に残る。

雑踏の音(1)「Fotoparaseudocumentonahora」から始まる(2)「Feliz Cidade(幸せな街)」のMV。

ブラジル北東部音楽のリズムを取り入れた(3)「Vendaval」にはルイス・カンポレスがヴォーカルで参加。ブラジルらしいパーカッション強めのリズムにチェロも絡み、美しい楽曲だ。

女性歌手ソフィア・クペルチーノ(Sofia Cupertino)がゲスト参加した(4)「Gaza」も素晴らしい1曲だ。ミナスらしい複雑で多色なロックで最高にかっこいいが、後半では木管のソロがあったり、最後の最後でフラメンコになったりと予想のつかない展開が面白い。

アルバムには14曲が収録されており、その後も豊潤なミナスの音楽シーンを象徴するような素晴らしい楽曲が連続する。ラストのカロル・モライス(Carol Morais)との親密なデュオ(14)「Depois que o Sol partir」に至るまで、濃密な音楽体験が約束されている。

これはペドロ・サントスという若き音楽家がその全身全霊を音楽に捧げ、溢れんばかりのアーティスティックな感性が発現した大傑作だ。

個性的な音楽家たちがひとつの“Feliz Cidade = 幸せな街”を作り上げる

Pedro Santos

Pedro Santos (photo by Paulo Abreu)

ペドロ・サントスは1990年ミナスジェライス州都ベロオリゾンチ生まれのシンガーソングライター/ギタリスト。11歳の頃から独学で音楽を始め、ロー・ボルジェスやミルトン・ナシメントといったミナスの偉大な先人たち(所謂“街角クラブ”)やニック・ドレイクなどのフォーク、アルセウ・ヴァレンサといったブラジル北東部音楽にインスパイアされてきた。「Ilton Mourão」(2009 – 2014年)や「Projeto Alpercata」(2012 – 2016年)、「Trimera」(2018 – 2019年)といったバンドに在籍し主にギタリストとして活躍。

彼の初のソロアルバムとなる今作『Feliz Cidade』は2015年の終わりに精神的な困難に直面したあとに、自分自身の人生を見つめ直し、忍耐と時間をかけて生み出されたアルバムとのこと。制作は前述のとおり多数のミュージシャンの協力を得て2017年から2019年にかけて行われた。楽曲ごとに異なるミュージシャンのチームで編成されており、それぞれの個性が表れているが、アルバム全体では不思議と統一感がある──そしてその構造はあらゆる個性の人間が集い、ひとつの空間や文化を形成する「都市」の構造にも似ている。

今作のプロデューサーを務めたルイス・カンポレス(Luiz Camporez)とのデュオ演奏(12)「Cordiais」

Pedro Santos – vocal, chorus, guitar
Luiz Camporez – vocal, chorus, guitar
Glaw Nader – vocal
Artur Araújo – vocal
Sofia Cupertino – vocal
Carol Morais – vocal
Laura Souza – vocal
Sofia Cupertino – chorus
Manu Andrade – chorus
Greyce Ornelas – chorus
Clarice Matos – chorus
Marcos Ruffato – guitar, bandolim
Luna La Hara – flamenco guitar
Pedro Ramalho – drums
Gabriel Bruce – drums
Paulo Fróis – drums
Camila Rocha – double bass
Bruno Vellozo – electric bass
Diego Mancini – fretless bass
Leonardo Barcellos – violin, viola
Sérgio Rabello – cello
Victor de Mello Lopes – oboe
Julian Tarragô – accordion
Daniel Brandi – accordion
Luísa Mitre – piano
Natália Mitre – vibraphone
Bruno Pes – clarinet
João Paulo Drumond – percussion
Vinícius Mendes – saxophone
Hugo Bizzotto – keyboards

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