ミナスの伏兵・鍵盤奏者クレイトン・プロスペリ初のアルバム
ブラジル・ミナスジェライス州出身のピアニスト/作曲家クレイトン・プロスペリ(Clayton Prosperi)が初のソロ作『Cativo』をリリースした。本作にはトニーニョ・オルタ(Toninho Horta)、マルコ・ロボ(Marco Lobo)、テコ・カルドーゾ(Teco Cardoso)、ハファエル・マルチニ(Rafael Martini)などミナスな重要な音楽家たちが多数参加。これまでにミルトン・ナシメントなどのバックで確かなキャリアを築いてきた鍵盤奏者の新たな門出を祝う。
ブラジリアン・ポピュラーミュージック(MPB)らしい爽やかで繊細なリズムとハーモニーに、やはりジャズの洗練とミナス特有の土着的なインスピレーションが垣間見える。
ほぼ全ての楽曲をクレイトン・プロスペリが作編曲しているが、アルバムのタイトル曲(4)「Cativo」のみハファエル・マルチニがオーケストレーションを担当。スローテンポのバラードに弦楽四重奏と名手ヴァウミール・ジル(Walmir Gil)によるトランペットが見事に溶け込む。
(3)「Samba em Sete」は娘であるマリアナ・プロスペリ(Mariana Prosperi)が参加し可憐なスキャットを聴かせる。イズマイル・チゾ(Ismael Tiso)のギターも素晴らしい。5拍子と6拍子を行き来しながら複雑さを感じさせずポップな(6)「De Mar e de Drummond」、トニーニョ・オルタがギターを弾く(7)「Conta」、テコ・カルドーゾがブラジルの風を運ぶフルートを吹く(8)「Hora Senhora」など、役者揃いの楽曲群は密度が濃く聴きごたえ抜群。
街角クラブ(Clube da Esquina)をはじめ、ジョビン、ジスモンチ、イヴァン・リンスなど彼がこれまでに肌身で触れてきたブラジルの豊かな音楽文化の流れが詰まった良作だ。
ミナス音楽を支えてきた鍵盤奏者
クレイトン・プロスペリはミナスジェライス州南部の街トレス・ポンタス出身。ミナスジェライス連邦大学(UFMG)でクラシックピアノを学び、鍵盤奏者、教育者、イベントのディレクターなどで活躍。ミルトン・ナシメントのアルバム『E a Gente Sonhando』には「Eu Pescador」という曲を提供し、アルバムはラテングラミー賞にノミネートされた。
そうしたキャリアを築くうちに、周囲からは自分のアルバムを作るようにとの声も強くなり、多くの仲間たちと3年間の制作期間を経て完成したのが今作だという。