ロジカルな社会派ギタリスト、クエンティン・アンガス新作
オーストラリア出身のギタリスト、クエンティン・アンガス(Quentin Angus)の新作 『The State of Things』は、マイケル・メイヨー(Michael Mayo, vo)やネイト・スミス(Nate Smith, ds)といったNYを代表するミュージシャンを起用した現代的で良質なジャズだ。
アルバムにはオリジナルのほか、(5)「Somewhere over the Rainbow」や(7)「What a Wonderful World」といった名曲カヴァーも。クエンティン・アンガスのギターには派手さや奇抜さはあまりないが、(5)「Somewhere over the Rainbow」での独創的なアレンジや、タイトル曲(3)「The State of Things」でイントロから執拗に保持されるオスティナートなど、音楽的な美しさを追求する姿勢の結果が個性の表出に大きく寄与。作品全体を通してジャズの伝統を受け継ぎつつ一流のアーティストたちが瑞々しい感性で創造的な遊びをするジャズの醍醐味が感じられる、素晴らしい作品になっているのではないだろうか。
ピアノはドイツ出身のカン・オルガン(Can Olgun)、ベースはNYのシーンで主にサイドマンとして活躍するデスモンド・ホワイト(Desmond White)。前出の3人と比べると知名度では控えめだが、堅実かつ随所で見せる美味しいプレイが作品のクオリティを支えている。
Quentin Angus プロフィール
クエンティン・アンガスは1987年オーストラリア生まれのギタリスト/作曲家。4歳の頃からギターを始めており、アデレード大学で博士号、音楽修士号、音楽学士号を取得。23歳の頃からニューヨークで活動を始め、特にギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)やジョン・アバークロンビー(John Abercrombie)の即興の研究に没頭した。
2017年にアリ・ホーニグ(Ari Hoenig)らと演奏したアルバム『In Stride』をリリースしている。
Quentin Angus – guitars
Michael Mayo – vocals
Can Olgun – piano
Desmond White – bass
Nate Smith – drums