現代ジャズギターの頂点!ギラッド・ヘクセルマン新譜は抑制と混沌の神憑り的バランスが見事な傑作

Gilad Hekselman - Far Star

刺激的なギラッド・ヘクセルマン新譜『Far Star』

イスラエル出身のギタリスト/作曲家ギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)の2022年新譜『Far Star』は、個人的に彼の生涯ベストとなる一枚のように思う。隙を見せない作編曲、アドリブ、編成、そしてサウンドの先進性……どれをとってもアイディアと創造力に溢れ、なおかつスタイリッシュだ。

現代ジャズのトップランナーたちが集っている。
口笛で始まる(1)「Long Way From Home」にはドラマーのエリック・ハーランド(Eric Harland)が参加し、耳を惹く特徴的なピッチのスネアをはじめ彼らしい以上なまでに分解能の高いドラムを披露。ギラッド・ヘクセルマンのギターの音作り、それに呼応するように纏わりつく口笛、遠くで鳴るキーボードなど狂気一歩手前のカオスが最高にかっこいい。

(2)「Fast Moving Century」にはエリック・ハーランドに加え、同郷イスラエルのスタープレイヤー、シャイ・マエストロ(Shai Maestro)がゲスト参加し、さらなるグルーヴと混沌の渦へ導く。

(2)「Fast Moving Century」のショートクリップ

(3)「I Didn’t Know」では一転しアコースティックギターでクールダウン。
ベースにオーレン・ハーディ(Oren Hardy)、ドラムスにアロン・ベンジャミニ(Alon Benjamini)というイスラエルの若手を迎えた(4)「Far Star」はシンプルだがよく練られたテーマを少しずつ変化・展開させていく。
アルバム全体に言えることだが、抑制が効いているようで一触即発の異様な雰囲気を感じさせる点は神憑り的だと感じる。

真骨頂とも言える(5)「Magic Chord」は冒頭から奇妙なヴォイシングのコードが連続。音色は歪ませているが、和音が濁らないギリギリのところを攻めており、そのバランス感覚は恐ろしいほどだ。

アルバム終盤もジヴ・ラヴィッツ(Ziv Ravitz, ds)、アミール・ブレスラー(Amir Bresler, ds)、ノモック(Nomok, key)といったイスラエル・ジャズの最前線を行く人材を迎え、一筋縄ではいかない音楽を練り上げていく。

レコーディング・エンジニアとしての経験がなく、パンデミックによって楽器とマイク、コンピューターとともに自室に閉じ込められたギラッド・ヘクセルマンが、この緊急事態がどれほど長く続くか分からないまま作り続けてきた音楽たち。ジャズの伝統を受け継ぎつつ、さまざまな実験を経て常に前衛を追求すし、既に現代ジャズギターの最高峰として評価される彼のこれまでの作品の中でももっとも刺激的な一枚となっている。

Gilad Hekselman – guitars, keyboards, bass, whistle, tambourine, body percussion, voice
Eric Harland – drums (1, 2, 3, 5, 6)
Shai Maestro – keyboards (2)
Ziv Ravitz – drums (8)
Amir Bresler – do-production, drums, percussion (7)
Nomok – do-production, keyboards (7)
Nathan Schram – viola, violin (4)
Alon Benjamini – drums, percussion (4)
Oren Hardy – bass (4)

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