TATRANのドラマー、ダン・マヨの新譜は完璧なソロ・ドラム
スリーピースバンドのTATRANでもイスラエルを代表するドラマー、ダン・マヨ(Dan Mayo)の新作 『Greenhouse』は、ライヴ・エレクトロニクスも組み込んだ独自の“ドラムセット”から繰り出す驚異の一人グルーヴ・エンターテインメント・ショウだ。
完全にソロドラムの演奏なので、万人受けする音楽ではないかもしれない。
が、ひとたびそのグルーヴの虜になると抜け出せない魔力を持つのがドラムスという楽器の魅力だ。リズムは多くの音楽の要であり、もっと言えば人間の原初的な音楽的欲求そのものだ。だからこそ、最高の純度でリズムのみにフォーカスした音源というものはそれだけで本能を刺激する。
(1)「Black Ash」から、随所に爆発的な創造力が溢れ出すドラミングが展開。“間”の取り方、ドラムセットに組み込んだパーカッションの効果的な活用、素晴らしいセンスの6連符、エレクトロニクスの活用などなど、ほかのメロディー楽器がないからこそ浮かび上がる驚異的なドラム。魔法のようなリズムの洪水に酔いしれたくなる最高のアルバムだ。
本作の収録曲はすべて彼のYouTubeチャンネルで実際の演奏風景が動画で公開されている。
ドラマーにとって、この素晴らしい演奏はまたとない研究材料にもなるだろう。
Dan Mayo プロフィール
父親がレッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)とラッシュ(Rush)の音楽で家中を埋めた家庭に育ったダン・マヨは、3歳でドラムやパーカッションに大いなる関心を示した。6歳から音楽のエリート教育を受けピアノ、サックス、マリンバを習得。音楽とドラムに集中するため高校を中退し音楽学校に入学したが、音楽をフレームワークで理解することに意味はないと感じ、ファンクやロック、ジャズの影響のもとドラム演奏の方法論を独自に構築していった。
2011年に結成されたTATRANというスリーピースバンドでは、2014年のアルバム『Shvat』で世界的な称賛を浴び、Bandcampのジャズ、インストゥルメンタル、ポストロックのチャートで1位を飾るほどの大成功を収めた。
Dan Mayo – drums, electrics