マーク・ジュリアナ。最高峰ドラマーが稀代のジャズ・カルテットで魅せる内なる声と表現力

Mark Guiliana - the sound of listening

Mark Guiliana Jazz Quartet 新譜『the sound of listening』

現代最高峰のドラマー/作曲家マーク・ジュリアナ(Mark Guiliana)のジャズ・カルテットによる3作目となる『the sound of listening』がリリースされた。メンバーは2015年の『Family First』、2017年の『Jersey』と変わらず、ピアノにシャイ・マエストロ(Shai Maestro)、ベースにクリス・モリッシー(Chris Morrissey)、サックスにジェイソン・リグビー(Jason Rigby)という編成。

彼のもうひとつのプロジェクト「BEAT MUSIC」とは対照的なリリカルな作品となっており、意図的に小文字にしたアルバム・タイトルや楽曲タイトルにも込められているようにミュージシャンとしての自身の内面の素直な表現を追求し、人々にどんな音を届けたいのかという誠実な想いが伝わってくる音楽だ。

(1)「a path to bliss」を再生して、一瞬かけるアルバムを間違えたかと思った。静謐なピアノで始まるこの曲はしばらくマーク・ジュリアナの叩くドラムスの音は入ってこず、1’50″頃になってようやく心臓の鼓動を刻むようなバスドラムの音が現れ、その後もタムを中心としたパーカッシヴな演奏が続く。

(1)「a path to bliss」

アルバムのハイライトとなるのは、個人的にはマーク・ジュリアナとシャイ・マエストロが在籍していた頃のアヴィシャイ・コーエン・トリオを彷彿させるような7拍子の(4)「our essential nature」だろうか。ワンホーン・カルテットという編成の強みを最大限に活かした楽曲で、リズム、テーマの旋律、各自のアドリブ、起承転結のある展開など全てにおいて完璧で、聴いていてこれ以上ないほどの幸福感を感じられる7分間だ。

今作はオーセンティックなジャズだけでなく、エレクトロニックも用いBEAT MUSICとの境界を曖昧にする楽曲も。(7)「the sound of listening」は打ち込みも活用したサウンドで今作の中では特に異彩を放っている。

(7)「the sound of listening」

ラストの(10)「continuation」も今作で特に注目すべき1曲。テーマ自体はペンタトニックを中心としたアジアンな印象を受けるのだが、3’10″頃から始まるイスラエル出身のシャイ・マエストロによるピアノソロは中東特有の音階となっており、その強烈な対比によって後半はカオスへと突入していく。

Mark Guiliana プロフィール

1980年、アメリカ合衆国ニュージャージー州生まれの独創的なドラマーであるマーク・ジュリアナは、古典的なアコースティック・ジャズ、革新的なエレクトロニック・ミュージック、またはネクストレベルのロックを演奏するドラマーとして常にその動向が注目されている。

これまでに様々なプロジェクトに参加しており、その度に大きな話題を呼んできた現代ジャズ・ドラマーの最重要人物だ。イスラエル出身のベーシスト、アヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)のトリオへの参加や、ピアニストのブラッド・メルドー(Brad Mehldau)とのエレクトリック・デュオ『Mehliana』、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)の遺作となった『★(Blackstar)』への参加、そしてアゼルバイジャンの新進気鋭のピアニスト/作曲家イスファール・サラブスキ(Isfar Sarabski)との共演などその活動領域は幅広い。

(2)「the most important question」

Mark Guiliana – drums, synthesizers (3, 5, 7), drum programming (7), percussion (10)
Jason Rigby – tenor saxophone, bass clarinet (1, 3, 5, 7), clarinet (1, 5), flute (5)
Chris Morrissey – bass
Shai Maestro – piano, Mellotron (1, 5, 7), Ampliceleste (1, 5, 7), Fender Rhodes (2)

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