カタルーニャのSSWパウ・バルベー、ブラジル音楽やギターポップを融合した個性的なポップス『: )』

Pau Vallvé - : )

パンデミック後の未来へポジティヴな提言。パウ・バルベー新譜

スペイン・バルセロナの人気シンガーソングライター/プロデューサー、パウ・バルベー(Pau Vallvé)の2022年新作『: )』。肯定的な感情を表す顔文字のタイトルに象徴された今作は“パンデミック後と崩壊前の快楽主義を蒸留する”をテーマとし、ブラジル音楽に由来するサウダージの感覚と甘酸っぱいティーンエイジャー風のロック/ポップス、そして人生を達観した風なシニカルな大人の感覚も融合した、コンプレックス(感情の複合)を煮詰めたような怪作となっている。

パウ・バルベーの前作『La vida és ara』(2020年)はパンデミックの隔離期間中に制作されたもので、悲しみと孤独を感じさせるものだったが、今作では(1)「Això ja està」でいきなり大人数でのハンドクラップやコーラスがフィーチュアされている。「前のアルバムの埋め合わせをしたかったのではなく、パンデミック後の生活そのものの埋め合わせをしたかった」と語っているとおり、友人や家族が参加した今作は賑やかで未来へと歩を進めようとする彼の強い意思を感じさせる。本場ブラジルのサンバと音楽的なお作法はだいぶ異なるものの、このサウダージはサンバの本質でもある。

UKロックを感じさせる彼らしいポジティヴなナンバー(3)「Aquest cop sí」などを挟んで、パウ・バルベー自身が監督したMVも制作された(5)「Tu deixa’t portar」もまた、サンバやボサノヴァからの強い影響が感じられる。

(5)「Tu deixa’t portar」

6/8拍子で躍動感のあるパーカッションが印象的な(2)「En positiu millor」、シンプルなコード進行ながらメロディラインが印象的な(8)「Ciutadella」など、ギター・ポップとしても聴き心地の良い作品で、既に25年ほどの活動歴を誇るカタルーニャの人気SSWをあらためて認知するには最適なアルバムだ。

Pau Vallvé - : )
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