ヨタム・ベン=オール、一段と進化し洗練された現代ジャズ・ハーモニカ『Endless』

Yotam Ben-Or - Endless

現代ジャズ・ハーモニカ筆頭格ヨタム・ベン=オールの新作EP

イスラエル・ジャズ新世代を代表するハーモニカ奏者、ヨタム・ベン=オール(Yotam Ben-Or)の最新EP『Endless』は、ジャズでは地味な存在と思われがちなハーモニカという楽器の現代におけるもっとも優れた表現者が彼であることを強く印象付ける作品に仕上がっている。

今作でもベネズエラ出身のピアニストのガブリエル・チャカルヒ(Gabriel Chakarji)、同郷イスラエルのドラマー、オフリ・ネヘミヤ(Ofri Nehemya)など現代ジャズのキーマンが多数参加しており、それぞれが実に活き活きと自由に楽器を奏で、青空に突き抜けるような清々しさを放つハーモニカの音色とともにどこまでも爽快なアンサンブルが気持ちいい。

タイトル通り場面転換の情感演出に優れた(1)「When Sadness Turns to Joy」、ガブリエル・チャカルヒのローズピアノが冴える(2)「Satla」、ブラジル音楽からの影響が窺える(3)「Forza Roma」、牧歌的なテーマながらもソリストたちが卓越したソロやアンサンブルを奏でる(4)「Perfect Contrasts」など素敵な楽曲が並んでいる。

青空の下での(3)「Forza Roma」のセッション

ラストの(5)「The End」も素晴らしい。ここではヨタムはハーモニカではなくピアノを演奏し、ギタリストのタル・マシアハ(Tal Mashiach)をフィーチュアした幻想的で物語性のあるアレンジと構成が印象的だ。

今作は2部構成の作品の第一部となっており、ヘブライ語の詩をフィーチュアしシンガーソングライターとしての実力を見せた第二部『Deliberations』もリリースされている。こちらも併せて楽しみたい傑作だ。

新世代を代表するジャズ・ハーモニカ奏者、Yotam Ben-Or

ヨタム・ベン・オールはエルサレム地域の小さな村、ナタフで育った。11歳の頃から叔父に教わりながらハーモニカの演奏を開始。高校卒業後にテルアビブに移り、テルアビブ音楽学校とニューヨークのニュースクールの共同プロジェクトに参加し、イスラエル全土で演奏を行った。2013年にロストフ国際ジャズコンペティション(Rostov International Jazz competition)で優勝、翌年にはイスラエルが生んだ最高のベーシスト、アヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)が企画したイスラエルの若手ジャズミュージシャンのコンピ盤『All Original (Best Young Israeli Jazz – Presented by Avishai Cohen)』にバンド“Jupiter”のメンバーとして参加している。

2014年に奨学金を得てニューヨークのニュースクールに留学。現代最高峰のハーモニカ奏者グレゴア・マレ(Grégoire Maret)に師事するなど、ジャズへの学びを深めた。
2018年にソロ・デビューとなる『Sitting on a Cloud』をリリース。
サイドマンとしても様々なバンドに参加している。

Yotam Ben-Or – harmonica, voice (1, 2, 5), percussions (1, 5), piano, additional keys (5)
Gabriel Chakarji – piano, Rhodes (1, 2, 3, 4)
Alon Near – bass
Noam Israeli – drums (1, 2, 3, 4)
Rogerio Boccato – percussions (3)
Yonatan Daskal – synths (2, 5)
Dana Herz – voice (5)
Shachar Elnatan – guitars, voice (5)
Tal Mashiach – guitars (5)
Ofri Nehemya – drums (5)

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