Patricia Brennan 2ndアルバム『More Touch』
パトリシア・ブレナン(Patricia Brennan) というヴィブラフォン奏者の新作を聴いてびっくりした。今作『More Touch』はメキシコに生まれ現在は米国で活動する彼女の2ndアルバムとのことだが、従来のメインストリームのジャズにはない現代音楽的な和音やフレージング、そして要所で極端なピッチベンドやエフェクトをかけた耳に残る奇妙なヴィブラフォンの音。マーカス・ギルモア(Marcus Gilmore)を始めとした現代NYジャズ最高峰のメンツを揃えたカルテットの音も斬新だ。抽象的な音楽性はときに“難解”だと敬遠されがちだが、彼女の場合はなぜか近寄り難い雰囲気はまるでなく、一昔前の隣近所の土足踏み入れ系の距離感も感じられるから不思議である。
アルバム収録の10曲はすべてパトリシア・ブレナンの作曲。スピリチュアルなジャズとクラシック寄りの現代音楽のちょうど中間を漂うような作風と演奏で、他の誰にも出来ない表現を追求する彼女の軸がよく表れている。これに完璧に呼応するのがドラムスのマーカス・ギルモア、ベースのキム・カス(Kim Cass)、パーカッションのマウリシオ・エレーラ(Mauricio Herrera)だが、いずれも脇役にとどまらないインタープレイで盛り上げる。このチームワークはパトリアシアが求める音楽や、それを実現するために必要なスキルを全員が理解しているが故に成し得た業だろうと思う。
極めて個性的なヴィブラフォン奏者、Patricia Brennan
パトリシア・ブレナンはメキシコ合衆国ベラクルス生まれ。音楽を愛する家庭に恵まれ、幼少期から父親と一緒にサルサのレコードに合わせパーカッションを叩き、母親と一緒にジミ・ヘンドリックスやレッド・ツェッペリンを聴き、ピアニストだった祖母の影響でピアノも習い始めた。
17歳のときにはアメリカ全土のミュージシャンからの選抜メンバーとしてアメリカのユース・オーケストラの一員としてアメリカ大陸のすべての国をツアーし、この時にヨーヨー・マやパキート・デリベラとの共演も果たしている。
2021年にリリースされた初のソロアルバム『Maquishti』は絶賛され、ニューヨーク・タイムズによる2021年のジャズアルバム・ベスト10にも選出された。
グラミー賞にノミネートされたジョン・ホレンベック・ラージ・アンサンブルとマイケル・フォルマネク・アンサンブル・コロッサスのメンバーでもあり、ビジェイ・アイヤーとリンダ・オーらによるプロジェクト、ブラインド・スポットのメンバーでもある。
Kim Cass – bass
Marcus Gilmore – drums
Mauricio Herrera – percussion
Patricia Brennan – vibraphone + effects, marimba