多様性のジャズ。ラファエル・マリオ・トリオ最新作
ハンガリー・ブダペスト生まれのピアニスト/作曲家、ラファエル・マリオ(Rafael Mario)のピアノトリオによる第二作目『Blessing』は、並外れた作曲センスと現代的な演奏感覚を持つ彼らの真価が発揮された見事な作品だ。ヨーロッパらしいジャズに留まらず、ハンガリーやローマの伝統音楽、ラテン音楽、バルカン音楽、エレクトロニックなども取り入れた多様性が楽しい。
ラファエル・マリオ・トリオは2014年にピアニスト/作曲家のラファエル・マリオ(1990年生まれ)によって結成され、2017年にデビュー作『My Hope』でデビューしている。今作ではピアノ、エレクトリック・ベース、ドラムスによるトリオ編成を基本に曲によってはギターやパーカッションなどを迎え、様々なジャンルの音楽から幅広く影響を受けた楽曲群が特徴的だ。妻の妊娠〜出産という、自分が父親になる過程で得たインスピレーションが創造力の源になっており、収録曲のタイトルもそれに因んだものが多い。
ジャズだけでなく、ラファエル・マリオは自身が好きなあらゆる音楽の要素を詰め込んだという。その結果としてこの作品で示された音楽は自然で正直で、多様性の豊かな世界の素晴らしさを代弁するようでもある。
2曲では素晴らしいヴォーカリストも参加する。
強烈なシンコペーションのラテンジャズ(5)「Song for Agi」ではキューバの歌手ジュライシ・ミランダ(Yulaysi Miranda)がスペイン語で歌い、(9)「Blessing」ではハンガリーの歌手エステル・ムンカチ(Munkácsy Eszter)が英語で歌詞を乗せる。この2曲はアルバムの中でも特に素晴らしいので、真っ先に聴くのも良いだろう。
Rafael Mario 略歴
ジュニア・プリマ賞を受賞したピアニスト/作曲家であるラファエル・マリオは、幼少時に祖父のジャズ バンドのリハーサルを見てから、音楽に一生を捧げたいと考えていた。最初はドラムを演奏していたが、6歳の頃にピアノに切り替えている。
ハンガリーが誇るピアニストの名前を冠した名門リスト・フェレンツ音楽大学を卒業後、米国トロントやカナダでスタジオ・ミュージシャンとして成功を収め、数年後にハンガリーに帰国。2014年に自身のピアノトリオを結成している。
Rafael Mario – piano, synth
Bartók Vince – electric bass
Hidàsz Tamàs – drums
Guests :
Palásti Máté – guitar (4, 5)
Tar Gergely – percussion (4, 5, 9)
Yulaysi Miranda Ferrer – vocal (5)
Munkácsy Eszter – vocal (9)