ダニ・ブラッキ、待望の『Frequência Rara』スタジオ録音盤
ブラジルの現行MPB(Música Popular Brasileira, ブラジルのポピュラー音楽)シーンを代表するシンガーソングライター、ダニ・ブラッキ(Dani Black)がまた素晴らしい作品を届けてくれた。新作『Frequência Rara』はナイロン弦ギターによる弾き語りを核にして構成されており、抑制的だが非常に効果的なほかのインストゥルメンタルのアレンジも素晴らしいセンスで、現代最高の吟遊詩人の風格が漂う。
収録曲の多くはすでに2020年のライヴアルバム『Frequência Rara (Ao Vivo)』で披露されていたものだが、アレンジには少しずつ変化が加えられており、ライヴの熱気に包まれた前作と比べるとより親密な印象を受ける。ボサノヴァやトロピカリアはもちろん、ブルースやロックも取り込んだ王道のMPBを行く色彩感覚の豊かなサウンドは今作でも際立つが、やはりダニ・ブラッキの繊細なヴォーカルの表現力も今作の非常に大きな魅力となっている。ナチュラルかつリラックスした声の表現力、そして時折見せる美しいファルセット・ヴォイスは何よりも彼の武器だ。
豊かな音楽文化を誇るブラジルのなかでも、唯一無二の稀代のアーティスト。
本作は、ダニ・ブラッキという底知れぬ才能を秘めた芸術家の真髄が遺憾無く発揮された傑作だ。
Dani Black 略歴
ダニ・ブラッキ(本名:Daniel Espíndola Black)は1987年サンパウロ生まれ。
MPBの歌手テテ・エスピンドーラ(Tetê Espíndola)が母親、作曲家アルナルド・ブラッキ(Arnaldo Black)が父親という音楽的に恵まれた家庭に育ち、彼自身も作曲やギター演奏、歌などで早くからその才能を示した。ソロデビュー前にはマリア・ガドゥのDVDのレコーディングへの参加、シコ・セーザルのバンドでの国内ツアーなどブラジル音楽の最前線を経験。2011年にBillboard Brasil でRevelation Artist として選出され、同年デビュー作『Dani Black』をリリースした。
自身名義のスタジオ録音作としてはデビュー作の他に2015年の『Dilúvio』、2021年のカヴァー集『Versões』があり、今作 『Frequência Rara』は4枚目のフルレンス・アルバムとなっている。