アルジェリア出身SSWスアド・マッシ、通算10枚目の新作
アルジェリア出身のシンガーソングライター/ギタリストのスアド・マッシ(Souad Massi)は、通算10枚目となる新作『Sequana』で彼女の音楽の幅をさらに広げた。プロデューサーはアラブやアフリカ音楽にも造詣の深い英国のギタリスト、ジャスティン・アダムス(Justin Adams)。
アルバムはガットギターと弦楽四重奏をフィーチュアした、もの悲しげな(1)で幕を開ける。前半はフランス語、中盤でシリア系のフルート奏者ナイサム・ジャラル(Naïssam Jalal)のソロを挟んで後半はアラビア語で歌われる哀愁に満ちた情熱的なサウンドは彼女の真骨頂だ。ナイサム・ジャラルは他の楽曲でも卓越したフルートを披露しており、今作に大きな貢献をしていることも見逃せない。
(3)「Mirage」では地中海沿岸の音楽を探求し続ける英国出身のSSWピアース・ファッチーニ(Piers Faccini)をヴォーカルでフィーチュア。
(9)「Ch’ta」などは一見よくあるアメリカのフォーク・ミュージックのような曲調だが、アラビア語の歌詞と、ウードで演奏されるオブリガートではアラビックな旋律が顔を覗かせるなどアレンジの妙技で楽曲を個性的にしている。
これまでも彼女が得意としてきたアルジェリアの伝統的なシャアビと米英由来のロックやフォークのミックスはもちろん、前述のような様々なジャンルの音楽からのアイディアの借用や、特筆すべきは(10)「L’Espoir」で南米のボサノヴァも取り入れるなどより表現の幅を広げ、完成度の高い作品に仕上がっている。
Souad Massi プロフィール
アルジェリア出身のスアド・マッシは1972年生まれのアマーズィーグ(ベルベル人)。労働者階級の貧しい家庭で育ち、幼い頃からギターを手に取り歌い始めたという。
1990年代のはじめ、政治的な歌を歌う地元のバンドAtakorに参加し7年間活動したが、その歌の内容から保守派からの殺害予告などの脅迫を受けるようになり国外退避を余儀なくされ、1999年からはフランスのパリに居を構えている。
2001年にソロ・デビュー作『Raoui』をリリース。
音楽的には地元のベルベル音楽はもちろん、米国のロック、フォーク、カントリーやポルトガルのファド、カーボベルデのモルナ、スペインのフラメンコ、さらにアラブ音楽などから幅広く影響を受けており、それらを無意識のうちにブレンドした独特の音楽性で人気を博している。歌詞もアラビア語、フランス語、ベルベル語、英語など多様で、時には同じ曲を別の言語で歌うこともある。