モスクワのエスノジャズ・カルテット、Sakhra。叙情的なピアノに特殊奏法満載のフルートが楽しい

Sakhra - Rise in Bedia

ピアニスト、Evgeny Abramov 率いるグループ、Sakhra

ピアニスト/作曲家のエフゲニー・アブラモフ(Evgeny Abramov)率いるモスクワのエスノ・ジャズ・カルテット、Sakhraのデビュー作 『Rise in Bedia』が素晴らしい。それぞれが高度な技巧をもつピアノトリオ+木管の4人のアンサンブルを中心に、民族楽器や電子楽器を塗したワールド・コンテンポラリーなジャズだ。

メンバーはピアノのエフゲニー・アブラモフのほか、フルート/サックス/ドゥドゥクのアントン・コティコフ(Anton Kotikov)、ドラムスのピュートル・タラレイ(Piotr Talalay)、ベースのパヴェル・プロキモフ(Pavel Prokimov)という布陣で、数曲でゲストのヴォーカリストやストリングスも加わる。

ロシアらしい叙情的なジャズを軸に、中東や東欧の音楽が混ざり合い、独創的かつ高いレベルのアンサンブルを実現。特に木管奏者アントン・コティコフはフラッター(巻き舌奏法)やグロウル(発声奏法)といった特殊奏法を随所で効果的に用い、サウンドの重要な役割を担っている。

楽曲タイトルにも「コルカタ」「ダマスク」「ベオグラード」「セヴァンの歌」といった地域の名称が使われ、彼らの音楽の方向性を端的に表している。アルバム表題曲である(3)「Rise in Bedia」は10世紀の正教会の遺跡が保存されているジョージアの最西端のアブハジアの村についての曲で、はるか古代からの時の流れに思いを馳せるような楽曲の展開も美しく、見事だ。

ゲスト歌手ナターシャ・ブリノワ(Natasha Blinova)を迎えた(3)「Rise in Bedia」

アルバム収録曲はイスラエルのベーシスト、アヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)が演奏したことでも知られるヘブライ人作曲家/詩人タビア・シュロンスキー(Tuvia Shlonsky, 1874 – 1929)の作による(7)「Ani Maamin」を除き、すべてエフゲニー・アブラモフの作曲。古いジャズの様式に囚われない自由で創造的な発想で組み立てられた楽曲群はいずれも繊細な物語性を秘めており、映像的だ。

Evgeny Abramov プロフィール

エフゲニー・アブラモフはロシア国立高等音楽学校、サンクトペテルブルク音楽院、そしてニューヨーク市立大学音楽学部で学んだ作曲家/ピアニスト。クラシックを礎とし、国際的な音楽コンクールで数多くの賞を受賞しており、世界中で演奏経験がある。彼の演奏は高い技術と感性に溢れており、クラシック音楽に限らずジャズ、ポップスなどの様々なジャンルで活躍。

エスノ・ジャズのプロジェクトであるSakhraは2014年に結成され、モスクワの主なジャズクラブでの人気グループとなっている。

(8)「Sevan Song」。アントン・コティコフはアルメニアの民族楽器ドゥドゥクを演奏している。

Sakhra :
Evgeny Abramov – piano, synth
Anton Kotikov – flute, saxophone, duduk
Piotr Talalay – drums, percussion
Pavel Prokimov – contrabass, electric bass

Guests :
Natasha Blinova – vocal (3)
Anna Chekasina – vocal (6)

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