ワルシャワの音楽家ミハウ・バランスキの衝撃的デビュー作
ポーランド・ワルシャワを拠点に活動するベーシスト/打楽器奏者/作曲家ミハウ・バランスキ(Michal Baranski)の衝撃的な初リーダー作『Masovian Mantra』。タイトルの“マゾヴィア(ポーランドのワルシャワを中心とした地域)のマントラ”が表す通り、ポーランドから中東を経てインドに続く、地理的にも時間的にも広大な音楽文化を取り入れた新しいジャズだ。
ピアノの同郷ポーランド出身ミハウ・トカイ(Michał Tokaj)、同じくポーランド出身のタブラ奏者ボデク・ヤンケ(Bodek Janke)、イスラエル出身ギタリストのシャハル・エルナタン(Shachar Elnatan)といった名手を揃えたバンドで繰り出されるサウンドは、隅から隅まで面白い。(1)「Masovian Mantra」では冒頭からサンプリングや南インドのヴォイス・パーカッションである“コナッコル”が用いられ、タブラの音や、ヨアキム・マンセル(Joachim Mencel)によるハーディ・ガーディのドローン音が北欧とインドの境界を取り払う。
このアルバムは、ウェザー・リポート、パット・メセニー、ジョー・ザヴィヌル・シンジケートといったかつて世界を席巻したジャズ・フュージョンは勿論のこと、アルメニアのティグラン・ハマシアン、イスラエルのアヴィシャイ・コーエンといった現在進行形のグローバルなジャズ・シーンからのインスピレーションも感じられる。
さらには(4)「Leciały Zurazie」などはヒップホップのリズムの上で民族音楽的な女性歌手の歌唱を重ねるなど、時代性を超越した感覚は最高にかっこいい。
(7)「13 Lakes」はプログレッシヴ・ロックや中東音楽の要素が強く、この手の複雑かつエキサイティングな音楽が好きであれば堪らないだろう。
本作は1965年から続くシリーズ『Polish Jazz』の88番目の作品という位置付けだが、そうしたシリーズに頼らずとも単独の作品として非常にレベルが高く、魅力的な仕上がりとなっている。
収録された全8曲は、伝統曲である(4)「Leciały Zurazie」を除きすべてがミハウ・バランスキの作曲。独創的な編成から繰り広げられる音楽のディープな歴史の旅路を堪能したい、優れた作品だ。
Michał Barański – konnakol, percussion, contrabass, additional keyboards
Michał Tokaj – piano
Łukasz Żyta – drums
Bodek Janke – tabla
Joachim Mencel – hurdy gurdy
Kacper Malisz – violin
Shachar Elnatan – guitar
Kuba Więcek-OP – synth
Dziadek Tadek – reading
Olga Stopińska – vocal