イスラエルの女性音楽家による極上のアンサンブル
イスラエルの5人の女性ミュージシャンによるジャズバンド、Queenta Ensemble のデビュー作『Shoshana』。“ヘブライ音楽の女王”と称えられる歌手ショシャナ・ダマリ(Shoshana Damari, 1923 – 2006)が歌った歌曲の再発見をテーマとしたカヴァー曲集で、可憐な声をもつヴォーカリスト/編曲家のチェン・レヴィ(Chen Levy)を中心に、ピアノ、フルート、ベース、ドラムスのバンドを従えイスラエルの音楽文化を象徴するかつての名曲を鮮やかに現代に蘇らせている。
(1)「היו לילות」(曲名は直訳で「夜があった」)はイスラエルの詩人ヤコブ・オーランド(יעקב אורלנד)が書いた詩をもとにした有名な古い歌曲で、イスラエル建国から現代まで、ショシャナ・ダマリをはじめとし数多くのアーティストにカヴァーされ続けてきた。
ショシャナ・ダマリの声質は重く、クラシックやオペラからも影響を受けているため今の時代からすると仰々しさも感じさせるが、今作のヴォーカリストであるチェン・レヴィの声質は軽やかで、バンドのアレンジも現代的。ヘブライの古い歌曲の21世紀からの入り口としても良い作品かもしれない。
(4)「כלניות」(アネモネ)はショシャナ・ダマリの最初のヒット曲で、1945年に初めて演奏され、その後彼女の人生を通じて代表曲となったもの。今作ではチェン・レヴィは中間部でマウス・トランペットによるソロも披露するなど、ジャズ歌手としての多彩な表現力で魅せる。
(6)「אור」(光)は人気SSWマティ・カスピ(Matti Caspi)が編曲したヒット・アルバム『Or』(1988年)のタイトル曲で、作曲はイスラエルの国民的な作詞作曲家ナオミ・シェメル(Naomi Shemer)というショシャナ・ダマリのキャリアを代表する楽曲。ここではチェン・レヴィの歌にハダー・ノイバーグ(Hadar Noiberg)のフルートが見事に寄り添い、情感豊かにノスタルジアを歌う。
ラストの(7)「מגדלור」(灯台)は美しいアレンジに乗せて歌う、チェン・レヴィのオーガニックなスキャットも素晴らしい。
Chen Levy – vocals
Hadar Noiberg – flute
Katia Toobool – piano
Inbar Paz – double bass
May Segal – drums