トランペット&サックス 双頭カルテットの激アツ新譜『Symmetric』
トランペット奏者ニコラス・ガルデール(Nicolas Gardel)と、サックス奏者バティスト・エルバン(Baptiste Herbin)の双頭名義の『Symmetric』は、古くはビバップやファンクから現在進行形の最新のジャズのスタイルまで、演奏面でもサウンド面でも多様でハイレベルな音楽が聴ける作品となっている。
アルバムには二人のほかに鍵盤奏者ローラン・クーロンドル(Laurent Coulondre)とドラマーのヨアン・セラ(Yoann Serra)が全面参加し、カルテット編成で演奏される。ベース(低音)はローラン・クーロンドルが左手でシンセベースやオルガンを弾いている。
冒頭、(1)「Jungle Bells」からいきなり衝撃的だ。重量級のドラムとグルーヴするシンセベースの上でトランペットとサックスがエキゾチックなユニゾンのテーマを速く激しく吹く。適度に効果的なエフェクトも素晴らしい。何より驚くのが鍵盤のローラン・クーロンドルのプレイだ。本作では脇役であるはずの彼だが、ブラッド・メルドーばりの縦横無尽の演奏をみせ、圧巻の空間をつくっている。
現代的なジャズ・ファンクが多いが、バラードも絶品だ。
ニコラス・ガルデール作曲の(4)「Endless Memories of You」は彼の個人的な経験に基づく曲で、あまりに早くこの世を去ってしまった愛する人に捧げられている。彼のトランペットの温かな音色は頌歌となり、どこにいるかは分からないがその人の元へと届いていることだろう。
(8)「Henriette」はバティスト・エルバンの家族である一人の女性に捧げられており、ゆったりとした美しいメロディーやアドリブが印象的だ。
(10)「Arcos」はニコラス・ガルデールの母親の出身地であるスペイン南部の歴史ある町アルコス・デ・ラ・フロンテーラに因んでいる。
ソウルフルでブルージーな(5)「Le zappy」や高速フォービートの(6)「The Stroke」も最高。ここでもやはりローラン・クーロンドルのオルガンが良い味を醸している。
Nicolas Gardel 略歴
トランペッターのニコラス・ガルデール(Nicolas Gardel)は7歳でトランペットを演奏し始め、トゥールーズ地方音楽院やパリ国立高等音楽院でトランペットやジャズを学んだ。
2005年に空軍のビッグバンドに参加。同時にサイドマンとしての活動を始め、ジューリ・ブエナベントゥーラ(Yuri Buenaventura)、デイヴィッド・サンボーン(David Sanborn)、アンリ・テキシエ(Henri Texier)、イブラヒム・マアルーフ(Ibrahim Maalouf)といった著名な音楽家たちと共演を重ねてきた。
影響を受けた音楽家として、ウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)、ロイ・ハーグローヴ(Roy Hargrove)、ミューズ(Muse)、レディオヘッド(Radiohead)、クイーン(Queen)などの名を挙げている。
Baptiste Herbin 略歴
一方のサックス奏者バティスト・エルバン(Baptiste Herbin)は1985年生まれで6歳からクラシックピアノのレッスンを始め、サックスは11歳から始めている。2005年からパリ国立高等音楽院でリカルド・デル・フラ(Ricardo Del Fra)に師事。以降、パリのジャズシーンのさまざまなミュージシャンと共演し、2007年にはヴィブラフォン奏者ブルーノ・ティエブルモン(Bruno Thieblemont)のグループに参加しアルバム『Septième Couleur』をリリース。2012年には自身初のリーダー作である『Brother Stoon』をリリースした。
これまでにマーカス・ギルモア(Marcus Gilmore)、アーチー・シェップ(Archie Shepp)、ジャン=ミシェル・ピルク(Jean-Michel Pilc)、エンリコ・ラヴァ(Enrico Rava)、エリック・レニーニ(Eric Legnini)、バティスト・トロティニョン(Baptiste Trotignon)といった国際的なアーティストとの共演歴がある。
Nicolas Gardel – trumpet
Baptiste Herbin – saxophones
Laurent Coulondre – keyboards, organ
Yoann Serra – drums