カタルーニャのSSW、ジュディット・ネッデルマン新作
スペインを代表するシンガーソングライター、ジュディット・ネッデルマン(Judit Neddermann)のソロ5枚目となる新譜『LAR』。ソフトロック、フォーク、ジャズ、南米音楽などがカタルーニャの多様性の文化の中で混ざり合い、スペイン随一と言われるジュディット・ネッデルマンの美しい声を際立たせる素敵な作品だ。
今作はこれまでの彼女の作品をプロデュースしてきたアルナウ・フィゲレス(Arnau Figueres)とパウ・フィゲレス(Pau Figueres)の共同プロデュース。長年の信頼関係から築き上げられたアコースティック主体の新鮮なバンド・サウンドを軸に、イスラエルのノア(Noa)、スペインのエリセオ・パラ(Eliseo Parra)、ブラジルのダニ・ブラッキ(Dani Black)といったゲストも迎え、多幸感のある音をたっぷりと聴かせてくれる。
地中海〜カタルーニャの伝統音楽色が強く、美しいコーラスワークが魅力的な(1)「La Llave De La Alegría」、広がりのある音空間が心地よい(2)「Esperar」、エレクトリック・ギターも効果的なスローバラード(4)「Llum Al Cel」などアルバムは美メロの連続。
カヴァキーニョやパンデイロなどブラジルの楽器を用い、軽快なパゴーヂ風サンバで仕上げた(6)「Celebrar」も楽しい。この曲名は“祝う”の意味で、日常の中にささやかな人生の喜びを見出すようなMVも印象的だ。
穏やかな春を感じさせる(7)「Primavera」、カタルーニャ語で“あなたの目”を意味する(9)「Els Teus Ulls」、そしてそして同じくカタルーニャ語で“平和”を意味するラストの(10)「Pau」──ここでのラヴィ・ラモネダ(Ravi Ramoneda)のハンドパンや、Noaの祈るような深みのあるヘブライ語ヴォーカルの言葉に表せない美しさといったら…!!
絶えず繰り返す日常の中で仲間たちと笑い合い、愛し合い、時には孤独を味わい、そうやって生きる喜びの中から生まれた、宝石のような歌たち。人生の傍に置いておきたい、本当に素敵な音楽だ。
Judit Neddermann 略歴
ジュディット・ネッデルマンは1991年バルセロナ生まれ。2014年にソロデビュー作『Tot el que he vist』をリリース。ジャズやソウルのエッセンスも感じられる歌声はここ日本でも高く評価されている。
2019年末にピアニストの妹、メリチェイ(Meritxell Neddermann)との共作による心落ち着くカタルーニャのクリスマスソング集『Present』を発表し、一部界隈では大きな話題となった。彼女はまた、2019年にリリースされ、グラミー賞のベスト・ラテン・ポップ・アルバムを受賞したアレハンドロ・サンス(Alejandro Sanz)のアルバム『#ELDISCO』にも客演している。
現代のカタルーニャを代表する歌手シルビア・ペレス・クルス(Sílvia Pérez Cruz)は彼女の師でもある。