宇宙と未来への知的好奇心に満ちた映像的音楽作品『2061』
“Electro Acoustic Beat Sessions”の頭文字をとったバンド名をもつポーランドのEABSは、現代でもっとも革新的で挑戦的なジャズバンドと称賛されている。サン・ラへのトリビュート・アルバム『Discipline of Sun Ra』(2020年)に続いて彼らが放つ新作『2061』は、壮大なSF的宇宙観と哲学を持つ彼らの個性をより強く印象付ける魅力的な作品だ。
アルバムのテーマは生と死、世界の始まりと終わり、そしてこれらすべてに実存的に絡み合った人間の役割について。シンセサイザーの強烈な音色が空間を切り裂く(1)「Global Warning」、古典映画『2001年宇宙の旅』にインスパイアされた曲名をもつ象徴的な(2)「The Mystery of Monolith」、(7)「Lucifer (The New Sun)」、(8)「The Odyssey of Dr Heywood Floyd」などSF好きなら曲名を見ただけで想像が掻き立てられる。事実、彼らの音楽は映画のように映像的であり、次々と展開する多様な場面を音楽で描いていく。アルバムタイトルである『2061』はおそらく、アーサー・C・クラークのまだ作られていない(そしてこれからも作られることのない)物語の架空のサウンドトラックを宣言するものなのだろう。
アルバムにはポーランドの生きる伝説的存在であるサックス奏者のヤン・プタシン・ヴルブレフスキ(Jan Ptaszyn Wróblewski)が(9)「A Farewell to Mother Earth」でゲスト参加している。1936年生まれ、ポーリッシュ・ジャズの黄金時代を牽引してきた彼の演奏は、『2001年宇宙の旅』の曖昧かつ示唆に富むエンディングを思い出させる。
Marek “Latarnik” Pędziwiatr – piano, Nord Stage 2, Moog Voyager, Teisco 100p, Elka Rhapsody, Crumar Performer
Marcin Rak – drums, beat machine;
Paweł Stachowiak – electric bass, double bass, Moog Sub Phatty
Olaf Węgier – tenor saxophone, soprano saxophone, baritone saxophone, Roland Aira System-1
Jakub Kurek – trumpet, modal electronics Cobalt8
Guest :
Jan Ptaszyn Wróblewski – tenor saxophone (9)