スペインの天才女性ギタリスト、アナベル・モンテシノスによる初の中南米曲集!『Alma Llanera』

Anabel Montesinos - Alma Llanera

スペインの天才ギタリストによる、初の中南米ギター曲集

スペインを代表するクラシック・ギタリスト、アナベル・モンテシノス(Anabel Montesinos)の2023年新譜『Alma Llanera』は至極の中南米ギター曲集だ。パラグアイ、アルゼンチン、ブラジル、ベネズエラ、メキシコといったラテンアメリカの作曲家たちの作品を繊細に、情熱的に爪弾く。

10代の頃から輝かしい経歴で活躍するアナベル・モンテシノスだが、このソロアルバムはまだ3枚目のようだ。ナクソスからリリースした前2作、『Guitar Recital: Anabel Montesinos』(2003年)と『Guitar Recital: Anabel Montesinos』(2011年)では主にタレガ、ロドリーゴ、グラナドスといったスペインのクラシック曲をレパートリーとしていたが、今作でフォーカスしたのは中南米の作曲家たち。レーベルもブラジルのGuitarcoopからのリリースとなり、これまでのイメージを刷新する内容となっている。

アルバムは南米のギター音楽を語る上で外せないパラグアイ出身のギタリスト/作曲家アグスティン・バリオス(Agustin Barrios, 1885 – 1944)による(1)「Caazapá」で幕を開ける。本作では他に(3)「Danza Paraguaya」や(5)「Las Abejas」などバリオスの楽曲は4曲収録されており、その中では知名度はもっとも低い曲と思われるが、明るいラテン的な曲調はアナベル・モンテシノスの新しい側面を見事に描き出しており、卓越したギタリストが手にした新しい武器=中南米音楽への期待が高まる。

中南米ギター音楽への美しい来訪を予感させる(1)「Caazapá」

(2)「Invierno Porteño」はアルゼンチン・タンゴの巨匠アストル・ピアソラ(Astor Piazzolla, 1921 – 1992)の四季シリーズから、「ブエノスアイレスの冬」として知られる名曲だ。ベースとコードとメロディーが複雑に絡み合い、ギター1本で演奏しているとは思えない素晴らしい技巧で、かつ抑揚の効いた情感豊かな演奏が素晴らしい。

アリエル・ラミレス作曲の(6)「Balada para Martin Fierro」

ブラジル出身のエイトル・ヴィラ=ロボス(Heitor Villa Lobos, 1887 – 1959)やヂレルマンド・ヘイス(Dilermando Reis, 1916 – 1977)、アルゼンチン出身のアリエル・ラミレス(Ariel Ramirez, 1921 – 2010)やカチョ・ティラオ(Cacho Tirao, 1941 – 2007)、ベネズエラのロドリーゴ・リエラ(Rodrigo Riera, 1923 – 1999)にアントニオ・ラウロ(Antonio Lauro, 1917 – 1986)、ベニート・カノニコ(Benito Canonico, 1894 – 1971)、そしてメキシコのマヌエル・ポンセ(Manoel Ponce, 1882 – 1948)といった中南米の主要な作曲家の楽曲が取り上げられており、近年関心の高まる中南米クラシックスを知るアルバムとしても最適だ。

アルバムのタイトルに採用された「Alma Llanera」はベネズエラの国民的作曲家ペドロ・エリアス・グティエレス(Pedro Elias Gutierrez, 1870 – 1954)によるもので、同国の“第二の国歌”として親しまれている名曲だ。ここではフラメンコにも特徴的なラスゲアード奏法を用い、力強いタッチで演奏されている。

クラシックだけではない。
セルジオ・アサド(Sergio Assad, 1952 – )やギンガ(Guinga, 1950 – )、パウロ・ベリナッチ(Paulo Bellinati, 1950 – )、マルコ・ペレイラ(Marco Pereira, 1950 – )といった現行の作曲家たちによる楽曲もレパートリーに加えられており、アルバム全編を通じてギターという楽器の魅力や、中南米音楽に流れる抒情性、力強さ、愉悦そして悲しみをじっくりと堪能できるアルバムに仕上がっている。

Anabel Montesinos 略歴

アナベル・モンテシノスは1984年にスペイン・カタルーニャ州のタラゴナ地方にある海岸沿いの村で生まれた。5歳の頃、音楽に興味を持っていた彼女は母親にヴァイオリンを習いたいと言ったが、フラメンコの本場であるアンダルシア州セビリア出身の母は彼女にまず最初にギターを習うことを薦めたという。

教師にも恵まれ、名手バニア・デル・モナコ(Vania del Monaco)の生徒となった彼女は7年後の12歳の頃に初のソロ・リサイタルを行い、ギターの神童として注目を集める。著名な作曲家アントン・ガルシア・アブリル(Antón García Abril)が15 歳の彼女の演奏を聴き「クラシック・ギターの有望なスター」と称えたというエピソードも残されている。17歳でフランシスコ・タレガ国際ギター・コンペティションで最年少で優勝を果たすと、ポーランド、イタリア、オーストリア、フランス、スペインで開催された9つのヨーロッパのコンクールでも優勝。ナクソスからデビュー アルバムをレコーディングする契約を得た。

夫はギタリストのマルコ・タマヨ(Marco Tamayo)で、夫婦でのデュオ活動も行っている。

アナベル・モンテシノスとマルコ・タマヨのデュオによる“4ハンド・ギター”で「トルコ行進曲」
Anabel Montesinos - Alma Llanera
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