UKの新進ギタリストが“ECM次世代の担い手”たちと組んだカルテットの初作『Purple / Black』

David Preston - Purple / Black (Vol. 1)

UKのギタリスト/作曲家デヴィッド・プレストンの新たなバンド

ロンドンを拠点とするギタリスト、デヴィッド・プレストン(David Preston)が新しいカルテットを率いての初のアルバム『Purple / Black (Vol. 1)』をリリースした。今作はこれまでの彼のトリオでも活動をともにしていた6弦ベーシストのケヴィン・グラスゴウ(Kevin Glasgow)との絆はそのままに、ECMからデュオ作『A Short Diary』を出したばかりのピアニストのキット・ダウンズ(Kit Downes)とドラマーのセバスチャン・ロックフォード(Sebastian Rochford)を新たに迎え、ジャズロックやフュージョンが持つ熱量と、抒情的なメロディーや即興とのバランスに優れた作品になっている印象だ。

シンプルなベースのシーケンスの上で緊張感の高い複雑なハーモニーと即興が繰り広げられる(1)「O. Winston」から、吸引力の強いジャズに耳を奪われる。次に続くシンセサイザーのエッセンスも効いた(2)「Cassino Dream」もそうだが、デヴィッド・プレストンの歪んだギターとキット・ダウンズのアコースティック・ピアノの即興の応酬が最高に楽しい。

(1)「O. Winston」

思慮深いギターに、そっとピアノが添えられる(3)「Urtext」以降は比較的アーティスティックで音楽的な深みのある楽曲が並ぶ。表題曲(4)「Purple / Black」も思わせぶりなイントロから二分音符で上下する和音のテーマが印象的で、そのエネルギーは徐々に高まっていくが最後まで爆発することなくエンディングを迎える。

アルバムの後半には(7)「Shade of Shibuya(渋谷の陰)」なんてミニマルなアプローチの楽曲も。後半に続くこれらの一見陰気な楽曲群からは、即興演奏だけでなく、どのようにハーモニーを組み上げるかや、内声も含めてそれぞれの音符をどのように繋げれば楽曲がより良くなるかを深く探求する、デヴィッド・プレストンの作編曲家としてのこだわりも見えてくる。

今回の4人がスタジオに集ってすぐに、彼らの演奏は2枚のフルアルバムに充分な素材を生み出す巨大なセッションとなったという。今作はその第一章。思いもよらない創造性によって導かれた心地よいグルーヴの渦は、まだまだこれからも続いていきそうだ。

David Preston 略歴

デヴィッド・プレストンはイギリス・ロンドンを拠点に活動するギタリスト/作曲家で、2009年モントルー国際ギターコンクールのファイナリストとして知られている。

英国で絶賛されたモダンジャズトリオ「Preston Glasgow Lowe」の作曲家兼共同リーダーであり、これまでに英国のインディーズ・レーベル「Whirlwind Recordings」から全曲オリジナル曲のアルバムを2枚リリースしている。

ジェレミー・ステイシー(Jeremy Stacey)、リアン・ラ・ハヴァス(Lianne La Havas)、アサフ・サーキス(Asaf Sirkis)、ピーター・インド(Peter Ind)、ゲイリー・ハズバンド(Gary Husband)といった英国のさまざまなミュージシャンのサイドマンとして活躍。さらにメロディ・ガルドー(Melody Gardot)、カーティス・スティガーズ(Curtis Stigers)、ジェシー・ハリス(Jesse Harris)、デヴィッド・ビニー(David Binney)といった多くの米国のアーティストととも共演やレコーディングを行っている。

David Preston – guitar
Kit Downes – piano, organ, keyboards
Kevin Glasgow – bass
Sebastian Rochford – drums

David Preston - Purple / Black (Vol. 1)
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