“休息”をテーマにしたMIQEDEMの3rdアルバム『Eshkona』
イスラエル・テルアビブを拠点に活動するインディー・フォークバンド、MIQEDEMの3rdアルバム 『Eshkona』。傑作と絶賛された前作『כרך ב׳』の民族音楽的なニュアンスをそのままに、さらにサウンド面で洗練された音楽に仕上がっている。
今作も中東から北アフリカの様々な伝統楽器を用い、英米のフォーク・ミュージックよりも、より地域の伝統に根差したサウンドを展開。バンドの女性ヴォーカリスト、シャイ・ソル(Shai Sol)の表現力豊かな歌唱と中東の弦楽器、そしてアコースティック・ギターやエレクトリック・ベース、ドラムスといった西洋音楽のバンドサウンドが見事に絡み合う(1)「Ezkera」から彼らの独特の世界観に惹き込まれる。
(2)「Harninu」はエレクトリック・サズや中東の打楽器が大きくフィーチュアされよりオリエンタルな雰囲気に。様々な楽器とリズムが入り乱れた祝祭感のある展開は圧巻だ。バンド名は古代ヘブライ語で「いにしえの」、あるいは「東から」を意味するが、その言葉を音楽で体現しているのが彼らだ。
今作の制作はパンデミックによる厳しい移動制限の真っ只中の2021年1月から3月にかけて開始された。バンドの3人のソングライターがテルアビブの友人の屋根裏部屋に引っ越し、そこで間に合わせのレコーディング・スタジオを作りアイディアを具現化。デモトラックを作成していった。
しかし、当時全員がイスラエルに住んでいたわけではなかったため、制作は一時中断。22年のはじめに行動制限が緩和されるようになると、バンド活動が再開できるようになり、今作の制作が再始動された。
アルバム名は“I will rest(私は休息する)”の意味で、(4)「Ever Kayona(鳩の翼)」の歌詞に因む。MIQEDEMのリーダーであるジェイミー・ヒルスデン(Jamie Hilsden)は次のように語っている:
僕らのこれまでのアルバムはアップテンポな曲が多いのだけど、レコードを聴き返してみると、今回はこれまでよりもずっと安らかなアルバムを書いていることに気づいたんだ。このアルバムは、とてもストレスが多く不安定な時期に書かれた。だから、こんなにも穏やかな音楽を書いていたことに驚きはない。
Bandcamp
おそらく自分たちを癒そうとしていたんだと思う。歌詞も同じ。アルバムには安息のイメージがたくさんあるんだ。
アルバムには安堵はあれど暗澹さはまったくない。安息がテーマにはなっているが、全編にわたって感じられるのは辛い時期を乗り越えて未来へ向かう希望だ。
Jamie Hilsden – electric guitar, acoustic guitar, classical guitar, additional synth, piano, electric piano, Fender Rhodes, additional bass, Hommond, Algerian mandole, vocals
Yaron Cherniak – Turkish saz, Azeri tar, electric saz, Turkish oud, additional Mini Korg synth, hurdy gurdy, cura, cretan lyra, vocals
Shai Sol – lead vocals
Vadym Sokolyk – bass
Shahar Haziza – drums
Yakir Ben Tov – keyboard, synths, beat programming
Elad Levi – Moroccan violin
Itamar Gutman – percussions; kalabash, karakeb, reeds, congas, shaker
Yoni Sharon – percussions; riq, ceramic darbuka, frame drum, dohola
Ivan Ceresnjes – percussions; frame drum
Oren Tsor – strings
Meira Segal – ney, Turkish ney
Shahar Kachka – n’goni
Ismet Diril – strings arrangement
New World Strings – Turkish strings
Turgut Özüfler – kanoun
Yazid Sakhnini – backing vocals
Shay Moshe Moshe – backing vocals
David Shkedi – backing vocals