イスラエルの新星トリオ、Zafioのデビュー作
ピアノ奏者のイタイ・シンホーヴィッチ(Itay Simhovich)、ベースのイライ・サロモン(Ilai Salomon)、ドラムス奏者ヤリ・スターン(Yali Stern)から成るイスラエルのピアノトリオ、Zafioのセルフタイトルのデビュー・アルバム『Zafio』は、同地の活発なジャズシーンを象徴する良作だ。プロデュースはピアニスト/作曲家のトメル・バール(Tomer Bar)が担っている。
トリオの3人は高校で出会い、すぐに音楽的なつながりに発展したという。以来、トリオはイスラエルの最高のジャズ・ミュージシャンらとコラボレーションし、伝統的なものから現代的なジャズまで、そしてクラシック音楽やイスラエルの歌など豊かな音楽文化からインスピレーションを得ながらユニークなサウンドとスタイルを確立してきた。2021年後半の数ヶ月間でこのデビュー・アルバムを準備し、トメル・バールのアドバイスも受けながら作編曲や演奏のプロセスを試行錯誤してきたという。その結果は聴いてのとおり、構成力に優れた美しい楽曲と、即興を含めた非常に高い演奏力で結実している。アルバムに収められたすべての楽曲は3人の共作としてクレジットされており、彼らの絆の深さも感じさせてくれる。
とにかく、叙情的で美しい演奏が最高に心地良い。三者が確かなテクニックを備えていながら、それをエンタメ的に誇示するのではなく、演奏の目的を音楽の芸術的な表現にフォーカスしている。
厳粛で静謐な演奏が多いのは彼らの深い精神性の裏付けだ。かといって音楽的な退屈さは一切なく、(3)「Yalduti HaShlishit」での効果的な不協和音を含むフレーズや音響効果、(4)「Hutzanim」での心のままに表現される即興演奏、(8)「Bye」でのエキサイティングな感情の爆発など演奏は変化に富んでおり素晴らしい。
彼らの音を聴けば彼らの目指す音楽が信頼に値するものだと分かるし、こうした若手音楽家を支えられるイスラエルの音楽シーンの未来も明るいものだと確信ができる。
Zafio :
Itay Simhovich – piano
Ilai Salomon – upright bass
Yali Stern – drums, glockenspiel