滅多に出会うことのない二つの世界の融合。歌うヴァイオリニスト、エヴァ・スロンゴ『Souffle』

Eva Slongo - Souffle

ジャズとクラシック、滅多に出会うことのない二つの世界の融合

スキャットで歌いながらヴァイオリンを弾くという個性的なスタイルで知られるスイス出身のエヴァ・スロンゴ(Eva Slongo)が、イタリア出身ジャズ・ピアニストのジョヴァンニ・ミラバッシ(Giovanni Mirabassi)らとクインテットを組み、ジャズとクラシックという“滅多に出会うことのない二つの世界”の融合を目指した作品が『Souffle』(2022年)だ。

ここではエリック・サティ(Éric Satie, 1866 – 1925)の(7)「Gnossienne」も、ガブリエル・フォーレ(Gabriel Fauré, 1845 – 1924)の(2)「Sicilienne」も、さらにはルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770 – 1827)の(4)「Allegretto」でさえも、ポピュラー音楽から派生したジャズ・スタンダードのように即興演奏のテーマとして扱われる。

ほかの楽曲はエヴァ・スロンゴ自身によるオリジナルで、クラシックによって培われた確かなテクニックと、その制約から解き放たれた自由な即興演奏の喜びが伝わる素晴らしい演奏を聴かせてくれる。

(3)「Les poèmes du vent」のライヴ演奏動画。ここでのベーシストはファブリシオ・ニコラス(Fabricio Nicolas)。

エヴァ・スロンゴをサポートするのは2000年代以降に大阪のジャズ・レーベル『澤野工房』の紹介により日本でも人気に火がついたピアニストのジョヴァンニ・ミラバッシのほか、ミラバッシのトリオでお馴染みのベース奏者フランソワ・ムータン(François Moutin)とドラムス奏者ルクミル・ペレス(Lukmil Perez)、そして数曲でサックス奏者のバティスト・エルバン(Baptiste Herbin)が参加。彼らは今作ではエヴァ・スロンゴの圧倒的な個性のもとで彼女のサポートに徹している印象を受けるが、随所での素晴らしいインタープレイも地味に際立ち、アルバム全体のクオリティを高めている。

Eva Slongo プロフィール

エヴァ・スロンゴはスイスのクラシック音楽一家に生まれた。彼女もまたクラシックのヴァイオリニストとして教育を受けたが、ある日、バーでほかのミュージシャンたちと即興演奏をおこなう機会があり、夜眠れないほどのあまりの多幸感を覚え、それをきっかけにジャズの即興演奏を習得することを決意。クラシック・ヴァイオリンの卒業証書を取得後にローザンヌでステファン・グラッペリの愛弟子であるピエール・ブランシャール(Pierre Blanchard)にジャズ・ヴァイオリンを学び、次にパリで幅広いスタイルを持つ世界的なディディエ・ロックウッド(Didier Lockwood)に師事した。

彼女はさらにジャズ・ヴォーカルも練習し、それが彼女にヴァイオリンを演奏しながら歌うというより称賛される個性をもたらした。

2011年にはステファン・グラッペリ国際ヴァイオリン・コンクールで最優秀即興演奏賞を受賞している。

(6)「Petite douceur」

Eva Slongo – violin, vocal
Giovanni Mirabassi – piano
François Moutin – bass
Lukmil Perez – drums
Baptiste Herbin – saxophone

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