イスラエル随一の木管奏者ギラッド・ローネン、インド音楽まで取り入れた新作『Reflections』

Gilad Ronen - Reflections

サックス奏者ギラッド・ローネン新作『Reflections』

イスラエル出身のマルチ木管奏者、ギラッド・ローネン(Gilad Ronen)による自身3作目のリーダー作『Reflections』。3管含む最大9名のアンサンブルで、スウィングから現代ジャズ、さらにはイスラエル音楽やインド音楽まで幅広く取り込んだ個性的なジャズが聴ける素晴らしいアルバムだ。サックスだけでなくフルート、クラリネットなど木管楽器をマルチにこなす彼だが、今作はテナーサックスに専念している。

全曲がギラッド・ローネンのオリジナルで、作編曲家としての豊かな才能も発揮されている。トランペット、サックス、トロンボーンによるハーモニーの動きが印象的な(1)「Resurrection」は複雑なリズムや展開をもつ楽曲で、新型コロナ禍における当局がとった“馬鹿げた措置”の一部をコミカルに描きつつ、従来の日常の復活までを物語に乗せてゆく。

(1)「Resurrection」

(4)「Redlections」と(5)「Pisces」にはイスラエル生まれのインド系歌手リオラ・イトゥハク(Liora Itzhak)が参加。タブラ奏者エレズ・モンク(Erez Monk)も参加し、アルバムに重要な変化球を加えている。

(4)「Reflections」

力強いイスラエル・ジャズ(7)「Desert Storm」も秀逸だ。アヴィシャイ・コーエン(ベースの方)を彷彿させる曲調で始まりつつも、さらにイスラエル的な旋律が強調される。テーマのあとは今作に全面的に参加するイスラエル随一のピアニストであるトメル・バール(Tomer Bar)による卓越したソロ。8分超の楽曲は映像的な構成美もあり、アルバムのハイライトのひとつとなっている。

つづく(8)「Capsule」は長くアメリカで学んだギラッド・ローネンらしく、アメリカーナに強く感化された楽曲で、アルバムの中でこれだけの振れ幅があるのも楽しい。

(8)「Capsule」

ひとことで言えば「多様性の音楽」なのだが、ほぼ同じ編成で演奏されるためか統一感も損なわれておらず、奥の深さも感じられる優れた作品である。

Gilad Ronen 略歴

ギラッド・ローネンは1979年イスラエル・テルアビブ生まれ。8歳でピアノを弾きはじめ、12歳でアルトサックスを手にし将来の道が定まった。14歳でテルアビブのテルマ・イエリン芸術高校で作曲とジャズを学んでいるが、彼の音楽的経験にはラビ(ユダヤ教の聖職者)であった祖父の歌も多大な影響を与えている。

16歳のときにバークリー音楽大学の5週間の夏期プログラムへの奨学金を得てアメリカに渡り、すぐに現地の教員たちを驚かせて全額奨学金を獲得。2000年からは正式にバークリー音楽大学に通い、そこで作曲と演奏の学位を取得し、功績と音楽性に対して数々の賞を受賞している。
その後はセロニアス・モンク・インスティチュートの修士プログラムに参加し、2009年にはセロニアス・モンク・ジャズ・コンペティションで準決勝に進出。同年にイスラエルに帰国し、以降同国で演奏活動の傍らテルアビブのニュースクール・プログラムの准教授を務めている。

Gilad Ronen – tenor saxophone
Ron Baron – trombone
Ron Warburg – trumpet
Liora Itzchak – vocal
Tomer Bar – piano, keyboard
Tal Yahalom – guitar
Nadav Shapira – bass
Ben Silashi – drums
Erez Monk – tabla

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