芸能一家の祝福と呪いの経験から、現代の子どもたちの未来を見つめるキミ・ジャバテの新作

Kimi Djabaté - Dindin

ギニアビサウのグリオの家系に生まれ育ったキミ・ジャバテの新譜

ギニアビサウ出身ポルトガル在住、グリオの家系に生まれたバラフォン/打楽器/ギター奏者キミ・ジャバテ(Kimi Djabaté)による2023年作『Dindin』は、グリオに代々伝わる伝統とアフリカ社会の複雑さを魅力的に発信する素晴らしい音楽だ。本作はキミ・ジャバテ自身の経験に基づく個人的なものであると同時に、愛、コミュニケーション、人間のつながりという普遍的なものでもある。

1975年に貧しいグリオ(伝統的に音楽を生業にする家系)に生まれたキミ・ジャバテにとって、音楽は単なる娯楽ではなく、幼い頃から半ば強制的に参加することになっていた家族の伝統でもあった。3歳のときに初めてのバラフォンを与えた彼は8歳の頃には結婚式や洗礼式で演奏するようになった。伝統楽器を学ぶ傍ら、国外の音楽を流すラジオのおかげで西洋のジャズやブルース、アフロビートやカーボベルデのモルナなどにも触発され続け、彼はバラフォンだけでなくギターやパーカッションも演奏するなどその音楽の幅を広げていった。

しかし、音楽的な環境と才能は彼にとって喜ばしいことばかりではなかったようだ。
家族はしばしば彼の意志に反して演奏を強要し、彼に他の多くの子どもたちのように無邪気な幼少期を遊んで過ごす余地をほとんど残さなかった。また、芸能に依存する生活は、時には充分な食料が得られないなど経済的な困難にも直面させた。

こうした経験は本作にも強く反映されており、子どもたちを労働力として搾取するのではなく、教育を与え、より良い人間になることを手助けしてほしいと切実に歌っている。

(2)「Yensoro」

歌詞はマリ帝国の子孫であり、ギニアビサウなど西アフリカに広く住むマンディンカ族が話すマンディンガ語で歌われる。
アルバムタイトルにもなった(6)「Dindin」は“子どもたち”の意味だ。アルバムでは宗教、女性の権利、貧困、教育、政治などの社会的なテーマを繊細かつ微妙なニュアンスで扱いながら、アフリカの状況について熟考している。難しいテーマを扱いながらもそのメッセージは楽観的で、彼の楽曲や歌は高揚感と希望を感じさせる。

「未来とは、私が現在構築しているものなんだ」とジャバテは言う。
(6)「Dindin」のMVは元気に遊んだり絵を描いたりする子どもたちがフィーチュアされているが、いくつかの場面で彼らが掲げるメッセージボードは強く胸を打つ。

(6)「Dindin」

(4)「Kambem」は“団結しよう”と訳される曲で、飢餓と戦争の終結、そして正義と誇りの必要性を力強いブラスやリズムに乗せて訴えている。
(7)「O Manhe」は強制結婚への反対を歌う。アフリカでは経済的な要因で若い女性が人身売買の被害者となることが深刻な社会問題となっており、彼は「愛してもいない人と結婚させることは正しいことではない」と訴えている。

多重録音された軽やかなバラフォンによる特徴的なイントロで始まる(10)「Mana Mana」は弱者を傷つけるのではなく手を差し伸べる必要性を説き、(11)「Djugu Djugu」では互いを憎しみ合うことを止めようと願う。

キミ・ジャバテのこの作品は、寛大さと愛に溢れ、アフリカや世界の行く末に希望を見出したいと切望する音楽だ。
そして彼は、音楽には事態を好転させる力があると信じている。

Kimi Djabaté – vocals, acoustic guitar, bongos, bala, claps, mola
Marcos Alves – percussion
Chico Santos – bass
Mamadi Djabaté – electric guitar
Paulo Borges – keyboards, accordion
Miroca Paris – congas, bongos
Fernando Fafe – vocals
Mbye Ebrima – kora
Elmano Coelho – saxophone
Daniel Salomé – saxophone

Kimi Djabaté - Dindin
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