完璧な不完全、洗練された粗野。ギリェルミ・コウチーニョ名作
ブラジル・パラー州都ベレン出身のシンガーソングライター、ギリェルミ・コウチーニョ(Guilherme Coutinho, 1942 – 1983)が1978年に残していた幻の作品『Guilherme Coutinho e O Grupo Stalo』が2023年になって復刻、初CD化された。ディスクユニオンのWebページでも絶賛されているが、これが聴いてみてびっくり、驚くほど最高にかっこいいブラジリアン・サイケファンク超名盤だった。
アルバムはローズピアノやエレクトリック・ギター、そして何よりも時代を感じさせるアナログ・シンセサイザーの炸裂っぷりに耳を奪われる。サウンドや音楽性は洗練よりも個性的、言い方を変えれば粗野で、フレーズも独特なのだがそれが彼の音楽の抗えない魅力となっている。初期のエグベルト・ジスモンチ(Egberto Gismonti)を彷彿させる、といえば伝わりやすいだろうか。ラストの(8)「Tema Pro Alvarito」を除いてすべてヴォーカル曲で、ヴォーカリストの飾らない声も上手すぎず下手すぎずでサイケなサウンドに馴染み、最高だ。
ブラジリアン・レアグルーヴを愛する人々は、今すぐにこれを聴くべきだ。
個人的おすすめは6/8拍子の切なげに疾走する(3)「Foicera」、ウネウネとするシンセが堪らない(4)「Rio Corrente」、ボサノヴァの風味も感じさせるチルな(1)「Atalaia」。
Guilherme Coutinho – organ, synthesizer, electric piano, percussion
Kzan – acoustic bass, backing vocals
Jatene’s Wife – backing vocals
Ceará, Tóta – drums
Mini-Paulo – electric bass
Bob – guitar
Barão – percussion
Magro – percussion
P. André – percussion
Zé Macedo – percussion
Elinho – vocals
Jatene – vocals, backing vocals