現代欧州ジャズの王者Tingvall Trio、「鳥」と彼らの環境をテーマにした最新作『Birds』

Tingvall Trio - Birds

Tingvall Trio、通算9枚目のアルバム『Birds』

結成20周年を迎える現代ヨーロッパ・ジャズを代表するピアノトリオ、ティングヴァル・トリオ(Tingvall Trio)の通算9枚目のアルバムは“鳥”がテーマ。アルバムタイトルもそのまま『Birds』と題されてた本作で、リーダーでありピアニスト/作曲家のマーティン・ティングヴァル(Martin Tingvall)はアーティストに様々なインスピレーションを与えてくれる“自然界の音楽家”たる鳥たちへの敬意と愛情、同時に人間の活動によって鳥たちが棲む環境が失われていくことへの警鐘を鳴らす。

トリオのこれまでの作品同様に、すべての楽曲はマーティン・ティングヴァルによって作曲され、リハーサルやライヴを通じて練り上げられてきた。ベースとなっているコード進行はシンプルで、キャッチーで美しいテーマとスリリングな即興、グルーヴする三位一体のアンサンブルは彼らの真骨頂だ。

(1)「Woodpecker」のMV。タイトルはキツツキ(啄木鳥)のこと。

アルバムには様々なタイプの楽曲が収められている。
(2)「Africa」は様々な問題を抱えながらも前向きに未来を視て今を生きるような楽天的なイメージ。(3)「SOS」はタイトル通り嘆きや怒りが込められた激烈な警句の表現。
オマール・ロドリゲス・カルボ(Omar Rodriguez Calvo)によるコントラバスのアルコはバラード(4)「The Day After」では悲劇的な未来を映し出すが、(6)「Birds」では鳥たちの歌のような繊細な美しさを醸し出す(この曲はリズムやピアノの軽やかさも素敵だ)。つづく(7)「Birds of Paradise」はその楽しげなタイトルとは裏腹にアンサンブルには悲しみと激情が滲む。

ラストは平和への願いを込めてソロピアノで演奏される(12)「A Call for Peace」。
この作品は、これまでのTingvall Trioの圧倒的な作品群の中でも、そのテーマ性、洗練された作曲やアンサンブルの完成度でもキャリアの最高峰と言えるのではないだろうか。

結成20年。欧州ジャズを代表するピアノトリオ Tingvall Trio

ティングヴァル・トリオはスウェーデンのピアニスト/作曲家マーティン・ティングヴァル(Martin Tingvall, 1974年 – )を中心に、キューバ出身のベース奏者オマール・ロドリゲス・カルボ(Omar Rodriguez Calvo)とドイツ出身のドラマー、ユルゲン・シュピーゲル(Jürgen Spiegel)とともに2003年に結成された。以来、いっさいのメンバー交代もなく結成20周年を迎えている。

彼らはマーティン・ティングヴァルと同郷のe.s.t(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)とも比較される現代的な音作りで人気となり、結成以降すぐに比類のない成功を収めてきた。これまでに複数のEcho Jazzアワードとライヴ・アクト・オブ・ザ・イヤーを受賞、ジャズ・アワード金賞合計6回、インパラ賞2回の受賞など客観的にも傑出したアンサンブルとして国際的に知られている。

リーダーのマーティン・ティングヴァルはソロとしても複数のアルバムをリリースしており、トリオの活動と共に高い評価を得ている。

Tingvall Trio :
Martin Tingvall – piano
Omar Rodriguez Calvo – bass
Jürgen Spiegel – drums

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