アンドレ・シケイラ&ナタリア・レプリ『Macramê』
ブラジル・パラナ州の二人、ギタリストのアンドレ・シケイラ(André Siqueira)と、シンガーのナタリア・レプリ(Natália Lepri)による美しい“声とギター”のアルバム『Macramê』。オリジナルはアンドレ・シケイラ作の(5)「Vozear」のみで、他はエグベルト・ジスモンチ、ギンガ、セルジオ・サントス、カルロス・アギーレ、クチ・レギサモンなど南米の美しい楽曲の極上カヴァーとなっている。
アルバムの幕開けはナイロン弦のバリトンギターが深く美しい音色を奏でる(1)「Elmo de São Jorge」。ガブリエル・カヴァルカンチ(Gabriel Cavalcante)とホベルト・ディディオ(Roberto DiDio)作によるこの曲を、アンドレ・シケイラによる非常に高いレベルのアレンジとギター演奏、そしてナチュラルな歌唱と声質のナタリア・レプリのデュオで魅力的な音楽の空間を作り上げる。
つづくエグベルト・ジスモンチ(Egberto Gismonti)の(2)「Auto Retrato」ではアンドレ・シケイラはヴィオラ・カイピーラ(10弦5コースのブラジルの民族楽器)を弾いている。煌びやかなスティール弦の響きが楽曲の非日常感を増幅し、スペインやアンゴラ、ブラジルや日本を巡る夢のような旅を追体験させるようだ。
アルゼンチンの巨匠、グスタボ・“クチ”・レギサモン(Gustavo “Cuchi” Leguizamon)による(3)「La Pomeña」は原曲のスペイン語での歌唱。今作では他にカルロス・アギーレ(Carlos Aguirre)作の(7)「Los Três Deseos de Siempre」も原語であるスペイン語の歌唱となっており、後者はアンドレ・シケイラによるアルト・フルートの演奏も素晴らしい。
ミルトン・ナシメントの歌唱でも知られるフェルナンド・ブランチ(Fernando Brant)とタヴィーニョ・モウラ(Tavinho Moura)作の(4)「Paixão e Fé」は本作のハイライトとなる1曲だ。ガットギターの印象的なハーモニクスに導かれるイントロから、ブラジル音楽の美しさを濃縮したような“声とギター”が繰り広げられる。着飾らないが、どこまでも豊饒な音楽。意識を音楽に集中させられる圧巻の3分38秒間、最後はギターのボディを叩くパーカッシヴな表現で締め括られる。
(12)「Ramo de Delírios」はギンガ(Guinga)作曲、アルヂール・ブランキ(Aldir Blanc)作詞の黄金コンビによる楽曲。ギンガ特有の複雑で美しい旋律を、ナタリア・レプリは見事に歌い上げている。
André Siqueira – guitar, baritone guitar, viola caipira, alto flute
Natália Lepri – vocal
Guest :
André Vercelino – percussion