黄昏時の魔法のような音楽。フィンランドの“電気羊飼い”が示す伝統と革新の狭間

Sähköpaimen - Hämärä

フィンランドのバンド Sähköpaimen による2nd『Hämärä』

“電気羊飼い”を意味するグループ名を持つフィンランドの3人組ユニット、セーコパイメン(Sähköpaimen)の2ndアルバム『Hämärä』は非常に興味深い音楽作品だ。

アルバムタイトル「Hämärä」とは“黄昏”の意味で、昼と夜の曖昧な境界線を彼らの伝統と革新の両方に足を踏み入れた音楽性に喩えている。打ち込みやループマシンによるリズム、シーケンスに伝統的な羊飼いの管楽器や口琴(マウスハープ)の風情のある音色が混ざり、女性ヴォーカルの歌が乗るサウンドは個性的で魅力的だ。フィンランドやその周辺の伝統音楽、さらにはアルプスの音楽の影響が随所に見られるサウンドはエレクトロニック・フォーク、あるいはオルタナティヴ・フォークと呼ぶに相応しい。

(2)「Jyrinpäivä」のMV。シュールな映像も音楽に合っている。

本作にはイタリアの少数言語であるフランコ・プロヴァンス語を話すカントイラ村の合唱団リ・マグノウトゥン(Li Magnoutoun)やフォーク歌手ヒルヤ・グレンフォルス(Hilja Grönfors)、ジジ・ウバウディ(Gigi Ubaudi)、さらには地元の牛なども鳴き声でゲスト参加。適度な混沌とまとまりがあり、アルバム全編にわたって黄昏時が持つ魔法のような雰囲気の音楽が繰り出される。

Sähköpaimen 略歴

バンド名はエレクトリック・シェパード(電気羊飼い)を表すフィンランド語。エレクトリック・シェパードとは牧草地を囲う電気柵や金属線に電流を流すための装置のことで、古い伝統が現代のテクノロジーと出会い、オーガニックがエレクトリックに溶け込み、自然や生活が変化していくことの象徴と彼らは捉えている。

バンドのメンバーは全員がシベリウスアカデミーの民族音楽科を卒業しており、スヴァン(Sväng)、スイスタモン・サーコ(Suistamon Sähkö)、ウィンド・オン・ウィンド(Wind on Wind)、トゥルテンペサ(Tuultenpesä)、エミ・クイッティネン、イクイセン・イカヴァン・オルケステリ(Emmi Kuittinen & Ikuisen ikävän orkesteri)といったさまざまな民族音楽グループでも演奏してきた。

ヴォーカルのアマンダ・カウランヌが夢の中で古風な電子音楽を演奏するバンドを見たこときっかけで2008年に結成。2014年にデビュー作『Niitto』をリリースしている。

Sähköpaimen :
Eero Grundström – machines
Amanda Kauranne – vocals, looping, mouthharp
Kirsi Ojala – wind instruments, mouthharp

Sähköpaimen - Hämärä
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