万華鏡のように煌めく“声とピアノ”。ヴァルダン・オヴセピアン&ソン・イ・ジョン 初デュオ作

Vardan Ovsepian & Song Yi Jeon - Lawless Heart

ヴァルダン・オヴセピアン&ソン・イ・ジョンによる初デュオ作

ワールドワイドに音楽を吸収し、現代ジャズ界で活躍する二人の音楽家──アルメニア出身のピアニスト/作曲家ヴァルダン・オヴセピアン(Vardan Ovsepian)と、韓国出身の歌手ソン・イ・ジョン(Song Yi Jeon)によるデュオ作『Lawless Heart』が届いた。最小限の編成ながら、リズムとハーモニーを高いレベルで追求する二人による圧巻の表現力と、その限りなく透明な美しさに心を動かさせる作品だ。

(1)「Lawless Heart」から、ヴァルダン・オヴセピアンの独特の音楽観、作風が存分に発揮されている。複雑なリズムやハーモニーは現代のジャズ寄りの南米(アルゼンチン、ブラジル)音楽からの影響が色濃く、そこに時折混じるアルメニアの民族音楽を感じさせる旋律の断片という彼の個性がこの音楽を魅力的にしていることは明らかだ。そこへソン・イ・ジョンは人間がもっとも注意を払う“声”で旋律に見事な装飾を加える。

(1)「Lawless Heart」

ヴァルダン・オヴセピアンといえばブラジルの“声の人”タチアナ・パーハ(Tatiana Parra)とのデュオ活動が有名だが、タチアナ・パーハが儚くも陽の性質を持つ妖精のような声だとしたら、今作のパートナーであるソン・イ・ジョンは幾分芯の強さを感じさせる強気な妖精だ。タチアナ・パーハとのアルバム『Lighthouse』(2014年)収録の「Joist 1」「Joist 2」の続編である(9)「Joist 3」で、二人の声を聴き比べてみるのも面白い。

ほぼ全曲がヴァルダン・オヴセピアン作曲のアルバム中で唯一、(7)「Yerkinqn Ampele」はヴァルダンが敬愛するアルメニアを代表する作曲家コミタス(Komitas Vardapet, 1869-1935)の楽曲の再解釈となっている。原曲の12/8拍子を基調に美しいリハーモナイズが施されたアレンジは、彼の故郷への愛情を感じさせる素晴らしい仕上がり。

コミタス作曲の(7)「Yerkinqn Ampele」

ヴァルダン・オヴセピアンとソン・イ・ジョン

ヴァルダン・オヴセピアン(Vardan Ovsepian)は1975年アルメニア生まれのジャズピアニスト/作曲家。
1990年からアルメニアのロマノス・メリキアン音楽大学で学び、その後エストニア音楽アカデミー、フィンランドのヘルシンキ音楽院、米国ボストンのバークリー音楽大学と渡り歩きクラシック、ジャズを中心に幅広く音楽を吸収してきた。
タチアナ・パーハとのデュオ「Fractal Limit」のほか、室内楽ジャズのグループ、Vardan Ovsepian Chamber Ensemble(VOCE)での活動も知られており、2013年作『Dreaming Paris: Theme and Variations』は高い評価を得ている。

韓国出身のソン・イ・ジョンはオーストリアのグラーツにある音楽芸術大学でクラシック作曲を学び、スイスのバーゼルにある音楽大学と米国ボストンにあるバークリー音楽大学でジャズ・ヴォーカルを学び、モダン・ジャズをベースに複雑なハーモニーや変拍子を多用する独自の音楽を構築してきた。
2015年に自身のクインテットでデビューアルバム『Straight』をリリース。以降もNYを拠点に活躍を続け、2022年にはブラジル・サンパウロ出身のギタリスト/作曲家ヴィニシウス・ゴメス(Vinícius Gomes)との双頭名義のアルバム『Home』をリリースしている。

Vardan Ovsepian – piano
Song Yi Jeon – vocal

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