イスラエルジャズを代表するピアノトリオ、Shaloshが描く理想郷の物語『Tales of Utopia』

Shalosh - Tales of Utopia

Shalosh 新作は古代の物語にインスパイアされた理想郷の物語

イスラエルを代表するピアノトリオ、シャローシュ(Shalosh)が新作『Tales of Utopia』をリリースした。これは混沌に陥る社会の中で彼らが思い描いた空想の物語に基づく曲集で、その物語は古代ギリシャやキリスト教の神話や民話、旧約聖書、『千夜一夜物語』などにインスパイアされている。

(1)「Tales of Utopia」から、イスラエルジャズの粋の結晶のような素晴らしい楽曲と演奏だ。7拍子のイントロから、エキゾチックなハバネラといった印象の特徴的なリズムと旋律。アルバム収録曲は全てヘッドフォンも編集も用いていないスタジオ録音だというが、生々しいライヴ演奏ならではの陶酔がある。

(1)「Tales of Utopia」の前半部分

(2)「Entrance to the Great City」は物語の主人公が初めて大都市に入る場面を描く。彼は音、匂い、光景に魅了され、大衆に押し流される前に内なる安らぎを求めている。

(2)「Entrance to the Great City」

本作はShaloshとしては2020年の『Onwards and Upwards』以来となるアルバムだ。
この3年の間に世界ではあらゆることが起こり、彼らの演奏活動もほぼ停止してしまったが、彼らはその間にイマジネーションを蓄えていた。この作品には、彼らが毎夜積み重ねてきたアイディアとエネルギーが閉じ込められている。

幻想的な(3)「King’s Dream Part I」

(4)「Views of Road in Crimson Red」でみせる激情は彼らの真骨頂だ。全神経を集中した本能的でエキサイティング、それでいて知的な演奏は驚きの連続。

濃密なアルバムのラスト、(10)「Wedding Song」では各種パーカッションやヴォイスも加わり、中東の結婚式での非日常な祝祭感を盛り上げる。彼らが描く理想郷の、理想的な締め括りだ。

現代イスラエル・ジャズを代表するピアノトリオ

ヘブライ語で「3」を意味するバンド名を持つShalosh(シャローシュ)は、ピアノのガディ・スターン(Gadi Stern)とドラムスのマタン・アサヤグMatan Assayag)の幼馴染みだった二人に、デビューアルバムのためにベースのダニエル・ベンホリン(Daniel Benhorin)が加わって2014年に結成された。その後ベーシストはデヴィッド・ミカエリDavid Michaeli)に交代し、現在もこの3人で活動を続けている。ジャズのピアノトリオだが、クラシック、グランジ、ロック、テクノ、フォークといったメンバーの音楽の好みを楽曲の中に取り入れ、独自の表現に定評がある。

年間の多くは世界中でツアーを行っており、これまでの最長では60日間で42ギグ、10か国で総計20,000kmのツアーの経験も。彼らの楽曲の多くはツアーの最中、移動中の車中などギグからギグの合間で作曲されている。2016年には横浜の赤レンガ倉庫で開催された横濱ジャズプロムナードに招聘され、その熱い演奏がSNSなどで絶賛された。

『Onwards and Upwards』(2020年)の印象的なジャケットデザインは、NHK大河ドラマの題字などの実績を誇る京都の先進的な書家、祥洲しょうしゅう(Shoshu, 福田祥洲)の筆による。

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Shalosh (Gadi Stern Trio) :
Gadi Stern – piano, keyboards
David Michaeli – double bass
Matan Assayag – drums

Shalosh - Tales of Utopia
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